2018年08月08日
No.184「土の色って、どんな色?」
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福音館書店
栗田 宏一
著者の栗田宏一さんは土の美しさと色の多様性に魅せられ、日本全国の土を採取してまわられています。そのコレクションは一万種を超えるそうです。
この本には、見開きの右ページに採取した場所の写真、左ページに取れた土を乾かし、ふるいにかけて作った標本が、短い文章とともに載せてあります。
最初に紹介してあるのは、山口県美東町で採取された、植木鉢を思わせる色の土です。雨上がりのひび割れた地面は随分固そうにみえます。
次のページは、茨城県大洗町の畑。こげ茶色のほくほくした土からは、そこで育つ立派な野菜が想像できます。
北海道当別町の土は、粉雪のような白色。雪解け水につかっていた灰色の土を乾かすと、まっ白に生まれかわったそうです。
他にも蘇芳色、青味がかった灰色、うす紅色など、身近な土にこれほどたくさんの色があることに驚かされます。
写真を見ながら、それぞれの土に育まれた地域の姿に思いをめぐらせてみるのも楽しいですよ。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年07月11日
No.183「せみとりめいじん」
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福音館書店
作:かみや しん
監修:奥本 大三郎
ごんちゃんはせみとり名人。てっちゃんの目の前で、あっという間に二匹もつかまえてしまいました。まだせみをとったことのないてっちゃんはうらやましくてなりません。そこでごんちゃんにとり方を教えてもらうことにしました。
まずはあみの作り方。ごんちゃんのお手製のあみは向きや形が自由に変えられるので、どんなところにいるせみでもつかまえることができます。
せみのいそうな場所、あみをふるタイミング、オスとメスの違い、せみの種類、さらに、
「めいじんは むしかごなんて つかわない。とった せみは ゆびのあいだに はさむんだ。」
名人ごんちゃんは自分の知識をてっちゃんに次々と伝授していきます。
そしていよいよてっちゃんも挑戦。おしっこをかけられたりしながらも、ようやく一匹つかまえることができました。
「やったあ!」
はじめてつかまえたせみを、てっちゃんもおそるおそる指の間にはさみます。せみのいのちの感触は、てっちゃんの指先に、力強く伝わってきたことでしょう。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年06月13日
No.182「ごびらっふの独白」
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ほるぷ出版
詩:草野 心平
絵:いちかわ なつこ
編:齋藤 孝
「ごびらっふ」はかえるの名前です。詩人草野心平は、ごびらっふのかえる語によるひとりごとを聞きとり、書きとめ、日本語に訳し、詩にしてくれました。「るてえるびる もれとりり がいく。」というかえる語は、「幸福といふものはたわいなくつていいものだ。」というように。
その詩に絵をつけたのがこの本『ごびらっふの独白』です。
ごびらっふのいう幸福とは、たとえば「考へることをしないこと。」「素直なこと。」「夢をみること。」
あるがままの生き方を受け入れ、仲間とつながり合い、うつらうつらの日をすごす幸福を、彼はおおらかに歌い上げます。
かえる語は目で追っただけでは難解ですが、声に出して読んでみると響きのおもしろさやのびやかさを体感でき、かえるの気持ちに近づいていけるような気がします。
画家はごびらっふの幸福感を、恋人に会いに行く姿で表現しています。ラストシーンで二匹は大きな虹を見ながら感嘆。
「いい びりやん
げるせえた。
ばらあら ばらあ。」
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年05月09日
No.181「けんこう だいいち」
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学習研究社
作:マンロー=リーフ
訳:わたなべ しげお
「じょうぶな からだは ふだんが だいじ。」
栄養のあるものをバランスよく食べ、背筋をのばし、しっかり動き、早寝早起きを心がけ、からだはいつも清潔にし、髪の毛やつめを切るのも忘れず、食事のあとには歯をみがき…。
丈夫なからだを保つために心がけなくてはならないことはたくさんあります。どれもたいして難しいことではありませんが、それだけについついいい加減にしてしまいがち。
この本では、健康に過ごすために必要なことが、ユーモラスな文章と楽しい線画で書かれています。
好きなものしか食べないのは「すききらいまぬけ」、姿勢が悪いのは「ねこぜくん」に「ぐにゃりさん」、今日は元気でも明日になったら具合が悪くなるかもと心配するのは「まぬけのなかの まぬけ」。こんなふうに言われると、ストレートに注意されるよりも素直に「気をつけなくては」という気持ちになれます。
同じ作者による、生活マナーや事故防止についての本『みてるよ みてる』『おっと あぶない』も楽しく読めますよ。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年04月11日
No.180「もぐらとずぼん」
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福音館書店
文:エドアルド・ペチシカ
絵:ズデネック・ミレル
訳:うちだ りさこ
ある日もぐらはズボンを見つけました。大きなポケットのついた青いすてきなズボンです。
「どこへいけば、あれとおそろいのずぼんが、てにはいるだろう。」ねずみに聞いてもちょうちょに聞いてもわかりません。
でも、きれがあれば切ってあげるとえびがにが、縫ってあげるとよしきりが約束してくれました。さて、きれはどうしたら手に入る? もぐらが困って泣いていると、亜麻が繊維の取り方を教えてくれました。
もぐらは亜麻に言われたとおり草取りをし、水やりをし、大きく育った亜麻をぬいて集めて水につけ、それを乾かし、やっと繊維が取れました。
それをはりねずみにすいてもらい、くもに紡いでもらい、こけももの実で青く染め、ありたちに織ってもらうと、ようやくきれの出来上がり。えびがにとよしきりは、約束どおりきれをズボンに仕立ててくれました。
みんなの力を借りて作ったズボンをはいたもぐらの嬉しそうなこと!
続篇の「もぐらとじどうしゃ」では、もぐらは勿論、この青いズボンをはいて登場しますよ。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年03月14日
No.179「わたしのワンピース」
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こぐま社
絵・文:にしまきかやこ
ふわふわっと空からおちてきたまっしろいきれで、うさぎはワンピースを作ることにしました。「ミシン カタカタ ミシン カタカタ」調子よい足踏みミシンの音を聞きながら仕上げたワンピースは、うさぎにぴったり。
「できた できた ラララン ロロロン わたしに にあうかしら」
新しいワンピースが嬉しくて、思わず浮かんできた歌を口ずさみながら花畑を散歩していると、あら不思議。ワンピースは花の模様に変わっていました。
それからも、雨が降ると水玉に、草原を歩けば草の実模様にと、うさぎの歌う「ラララン ロロロン」にあわせてワンピースの模様は変わります。
そして、小鳥の模様になったワンピースはうさぎを空へとつれて行き、虹色から夕焼け色へとダイナミックに変化し、最後は星の模様に。
絵も言葉もストーリーも自然体。理屈なく、まるごと楽しめるところが子どもたちの心をとらえるのでしょう。約50年前に出版されてから百五十万部以上売れている、ロングセラーの絵本です。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年02月14日
No.178 「愛蔵版 イヌイットの壁かけ 氷原のくらしと布絵」
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誠文堂新光社
作:岩崎 昌子
カナダの極北に住むイヌイットの女性たちは、代々、動物の骨と腱から作った針と糸で家族のためにパーカ(毛皮の防寒着)を作ってきました。今は縫製センターで、防水加工された布地を使って作られていますが、手仕事の伝統は母から娘へと引き継がれています。
その技を生かし、さまざまな形に切りとった色鮮やかなフェルトを厚手の布に縫いつけて作られたのが「イヌイットの壁かけ」です。この本には、その素朴な美しさに魅かれ、半世紀にわたって収集してこられた岩崎昌子さんのコレクション約100点が紹介されています。
北極グマやカリブーなど北の大地で共に生きる動物たち、狩りの様子、イグルーでの暮らしぶり、信仰から生みだされた不思議な化身の姿―伝統的な生活を描いた作品をとおして、イヌイットの「ものがたり」が聞こえてくるようです。
一年のうち八カ月はほとんど太陽が昇らない生活は想像の及ばぬ厳しいものでしょうが、縫い込められた人々や動物たちの姿は明るくおおらかで、生命の輝きを感じることができます。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2018年01月17日
No.177 「やまとゆきはら 白瀬南極探検隊」
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福音館書店
作:関屋 敏隆
白瀬矗は明治の末、木造の漁船を改造した開南丸で、二十六人の乗組員、二十九頭のカラフト犬とともに南極点到達をめざした探検家です。
約半年の長い航海。途中、犬が死んだり食糧が腐ったりと困難の連続でした。
その上南極大陸を目の前に氷が海をおおいはじめ、白瀬は一旦オーストラリアまで引き返すことを決めました。
半年待機したのち再挑戦。無事上陸はできましたが悪天候のため思うように進めません。吹雪の凄まじさが布地版画を通して伝わってきます。
このまま進めば人も犬も命が尽きると判断した白瀬は、南緯80度の地点で突進を断念しました。
少年時代に探検家を志して以来四十年間、暖房を使わずお湯を口にしない生活を続け夢に向かった白瀬でしたが、最後は目標達成よりも人の命を選んだのです。
帰国後は航行の借金を23年かけて返済し、昭和21年、85歳の生涯を閉じました。
その後、日本の南極観測船は「しらせ」と名付けられ、今も多くの隊員を乗せて南極へと走り続けているのです。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2017年12月13日
No.176「まりーちゃんのくりすます」
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岩波書店
文・絵:フランソワーズ
訳:与田 準一
雪のある日、まりーちゃんは羊のぱたぽんにクリスマスの話をして聞かせました。
「木のくつを だんろの そばに おいとくと、さんたくろーすは、ぷれぜんとを いっぱいいれといてくれるのよ。」
赤いスカーフ、小さな乳母車、たくさんのお人形―まりーちゃんの空想はどんどんふくらんでいきます。一方ぱたぽんは「わたしの くつは ぬげません。だから さんたくろーすは、くりすますの ぷれぜんと おいてかないわ、わたしには。」とくり返します。ぱたぽんのがっかりしていく様子は、絵の表情からも伝わってきます。
歌うような調子でやりとりをくりかえすうち、まりーちゃんはぱたぽんに靴を買ってあげることを思いつきました。
そしてクリスマスの朝。まりーちゃんの靴にはお人形が、そしてぱたぽんの靴の中にも、りぼんのついたベルが入っていたのです。首にかけたベルを鳴らしながらほし草の中をはね回るぱたぽんの嬉しそうなこと。
ふたりともすてきなクリスマスが迎えられてよかったね。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
2017年11月08日
No.175「かくれんぼ」
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福音館書店
文・絵:池 貴巳子
この絵本には、朝鮮半島で歌い継がれてきた三つのわらべうたが、それぞれにふさわしい絵をつけて紹介してあります。
ひとつめは「かくれんぼ」。「かい ぱい ぽ じゃん けん ぽ」でおにを決め、おばあちゃんちの広い庭で五人の子どもがかくれんぼ。みそがめの後ろ、はすの葉のかげ。「みつけた みつけた みんな みつけた こんどは ぼくが おにのばん」かくれんぼは、きりなく続きます。
次の「おいしそうだなやあむにゃむ」は、一文銭を拾った男の子がそのお金で餅を買い、食べようとするたびに邪魔されて、最後はねずみに食べられてしまった、というおはなしわらべうた。「やあむにゃむ」は、はやし言葉なのでしょうか。
最後は、雪を粉に見立て餅を作る「ゆきのうた」。蓬や梔子で餅を色あざやかに仕上げたり、粉雪の降るさまを「さろく さろく」「さるらんさるらん」と表現したりしているところにお国柄を感じます。
素朴なわらべうたを通して、お隣の国の豊かな民族文化に触れることのできる絵本です。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)