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店長情報

2019年05月15日

今日は上り坂

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 春の細かい雨が降る日、福岡S病院に友人を見舞った。手術の前に会いに行った。友人はいつもの笑顔で、励ましに行った私を逆に元気づけてくれた。友人はケラケラと笑うのに、部屋には不安な空気が重く漂っていた。
 病院を出て一人になりたかった。喫茶店でもないかと交差点を渡った。
 “医療を届ける 思いを届ける”という幟の下に『国境なき医師団』の方が募金のためにそこに立っていた。目があった。若いキリリとした表情の女性がサッと手を差し伸べた。私はそれを握った。降り続いている霧のような雨が彼女の髪や頬を濡らしている。 
 置かれていたパンフレットには、疲れた母親に抱かれた痩せた赤ちゃんがいた。私を見ている。予防接種を受けるために行列をするアフリカの子供達の写真を見ながら、一助になりたいと思った。誰かが紛争を起こし誰かが助ける。誰かが壊し誰かがまた積み上げる。沢山の人達が死に、そして飢える。片や多数の食物が廃棄される。私にはわからない世界の問題があるのだろうが苦しむのは無力な庶民と子供。
 『国境なき医師団』の活動をされる人達の、意志の強い光を放つ目と向かい合うと、心が上向きになっていくのがわかる。雨も上がり空が明るくなってきた。大丈夫だ。人は助け合いながら生き続けて行ける。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年05月08日

今日は下り坂

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 早朝ベッドの上で目を覚ます。まだ外は暗い。室温十度。目を開けたり閉じたりする。両手を挙げて身体を伸ばす。風邪でもないのに起きたくない。なんか身体がだるい。
 私がいなくても誰も困らない。私が消えていても、しばらくは誰も気づかない。世の中なんにも変わらない。
 起きて、顔を洗って、トーストを食べて、簡単に掃除して、ちょっと腰なんぞ痛くなって、コーヒー飲んで休憩して、ギシギシ自転車漕いでじゃが芋や大根買いにスーパーへ…ちっとも楽しくない。同じような毎日。
 女性の平均寿命まで十数年ある。大病になったらどうしよう。老化が酷くなったらどうしよう。貯金もないし…不安を先取りしておびえて暮らす根性なし。
 今日は起きたくない。起きたって昨日と同じ今日が始まるだけ。ああ、つまんないなあ。
 カーテンを少し開けてみる。紅梅は満開。日当たりのよい枝の花はもう散り始めている。白や赤、ピンクの椿が静かに咲いている。椿は本当に凛々しい。どうしてそんなに嬉しそうに咲いているの?
 本でも読もうかな。こんな日は暗いテーマの本がいい。一緒に奈落に落ち、地の底にもぐり私を抱いて一緒にさ迷ってくれる本がいい。
 今日は下り坂。明日は?
  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年05月01日

欲しいもの

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 並んで歩いていたAさんが私の耳元でこう言った。「言おうかな、どうしょうかな。言うと幸運が逃げてしまうかしら」。横顔がニタニタしている。「もしかして、賞を貰ったの?」。Aさんは破顔して「R文学賞の最終選考に残ったのよ」と言った。声がうわずっている。「やったね。きっと大賞取れるって」「賞金は50万よ。もし賞が取れたら補聴器を買うわ」「補聴器!」「今頃耳が遠くなってね」「もし私がその賞金を手にできたら鬘を買う」。Aさんが「髪あるじゃないの」と私の頭に手を置いた。「今は白髪を染めているけれど止めたいのよ。止めて髪が全部きれいな白髪になるまで鬘が欲しい」
 二人の七十二歳の女性の今欲しい物は、補聴器に鬘。テレビ等で子供達が、お正月にお年玉はどうしますか、と問われると「貯金する」と答えるが、私達は貯金などしない。今が大切なんだもの。若者の欲しいものは、雑誌の統計によると「愛」。私達は「愛」は持っている。多分。 Aさんは、鶏を書けば天下一品。
“雄鶏は雌鶏を保護するように守り、美味しいものは自分では食べず、銜えてはポトリ、銜えてはポトリと落とし雌鶏に食べさせる。安全な寝床に誘導し自分のDNAを残さんと朝も昼も情熱の赴くまま”。Aさん、大賞間違いない。補聴器買おうね。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年04月24日

女三界に家有り

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 この度、七十二歳にして初めて自分名義の家を持った。両親が亡くなったので自然に私の所有になったのだ。女三界にやっと家有り、となった。
 三界とは、仏教語で欲界・色界・無色界、衆生が活動する全世界のこと。「女三界に家無し」。女はどこにも安住すべき家がない、ということ。どういうこと?
 女は幼少のときは親に、嫁に行ってからは夫に、老いては子供に従うものだから、広い世界のどこにも身を落ち着ける場所はない、ということだ。 
 今どきこのような考えを持っている女性はいないと思う。従わなくても生きて行ける世である。しかし、世間にはこのような空気がまだまだ漂っている。ご油断なされるな。 
 私は人生の終わり近くに、やっと手足を伸ばし安心して暮らせる場所を持ったということになる。バンザーイ!、とはいかない。複雑な心境である。家を持つということは、自立するということ。固定資産税など税金を納めねばならない。ここに経済の問題が現れる。女性と経済、特に昭和の「三界に家なし」の時代の女性達。高度成長時代に身を投げ出して、夫を家を支えた女性達。団塊の世代しかり。皆、多分貧しい。
 処々問題はあるが、なにはともあれ鍵をかければ誰も入ってこられない空間を私は持ったのである。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年04月17日

マムシグサ

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 皆さん、『マムシグサ』ってご存じですか? 私は全く知りませんでした。花には詳しくありませんし、野山を歩くのは得意じゃありませんから。なのに、先日友人に連れられてちょっとした丘を散歩しました。友人の「マムシグサが咲いているのよ」という言葉に惹かれたのです。「本物のマムシもいるんじゃないの?」と聞き返したら「マムシはまだ出ない。まだ寒い」。  うーん? 真正面にヘビが立ち上がって、鎌首もたげた姿にそっくりの薄い茶色と草色の縞の花がある。鎌首と思ったのは、仏炎苞。(棒状の花を包み込む苞を仏像の背景にある炎形の飾りに見立てたもの)。茎も褐色と草色の斑で、図鑑で見ると、マムシの銭型模様の身体とそっくり。大きさも昔見慣れたヘビと同じ。これなら攻撃態勢のマムシと見間違う。名前をつけた人はすごい観察眼だ。ちなみに、この丘には、夏になると『マムシ注意』という看板が立つ。
 丘には柔らかい木漏れ日が射していた。芽を出したばかりのマムシグサ(一人前に茎は銭型模様をしている)や成長途上の仏炎苞を垂直に立てたもの、成熟して仏炎苞を前に曲げ果を育てているもの。秋には赤く熟したきれいな集合果がつく。しかし、ご用心。これはマムシグサという恐ろしい名前を持つ花、実には毒がある。触ってはいけない。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年04月10日

光の筋となって

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 早朝五時半、新聞を取りに外に出た。我が家の前に交差点があり、早くから車が行き交っている。赤信号で止まったトラックの荷台に赤、青、黄色の電飾がまだ明けやらぬ空を背景に、賑やかに輝いていた。うわー、きれい、しばらく見ていた。タイヤ近くの電飾は点滅までする。青信号で動きだすと、光の線が薄暗い道路の上に流れた。
 先日、友人を新山口駅から見送った時に見た、あの夜の新幹線の光の筋を思い出させた。夜の見送りは、哀しさが付きまとう。そう思うのは、演歌の影響かもしれないなあ。演歌では、最終列車といえば別れがつきものだ。
 新山口駅発の最終の上り新幹線は、22時38分、こだま。終着は福山。福山着23時57分。福山駅は閑散としているだろうか。降り立ったのは、恋人と別れて来たばかりの男(女)だろうか。出張で来たサラリーマンかもしれない。家路を急ぐ母親だろうか。想像が膨らむ。
 あの華やかなトラックはどこに行くのか。我が家の前の交差点は七時過ぎから混みあう。大半は県庁に行く車だ。県民一、三六五、九二六人(平成三十一年一月一日現在)を束ねる使命がある。いかねばならぬ県庁へ。遅刻してはならない。朝の交差点は殺気立っている。
 回覧板は午後、ゆっくり交差点を渡って山見さん宅へ持っていく。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年04月03日

のめり込む

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 のめり込みたいなあ、何かに夢中になりたい、と思う。キョロキョロ身辺を見回してみるが、なかなか熱中する事が見つからない。
 のめり込む・夢中になる・熱中する・凝る・病み付きになる・没頭・入れ込む・かまける・熱狂・血道を上げる・虜・フェチ・御宅…等々魅力的な言葉が並んでいる。
 ほかのことを全て忘れ、心がそのことだけに引き付けられる…なんという恍惚状態。心を奪われたい。
 しかし、前述の言葉などにはあまり良い解釈がない。例えば、『のめり込む』の例文には『若い女にのめり込む中年男性』。『かまける』には『夫は仕事にかまけて家庭をかえりみない』とある。『入れ込む』は『競馬に入れ込む』。
 健全なる精神は健全なる身体に宿る(ユウェナリス)。私は七十数年身体を使ってきたので年相応に衰えている。よってその身体に健全な精神は宿っていない。『健全』とは『心身や物事に異常や乱れがなく、安心できるよい状態である様子』。
 ああ、心を奪われたい、現を抜かしたい、嵌りたい、夢見心地の日々を送りたい、何かに身を入れたい。とりあえず、庭の隅を耕して野菜を育てよう、身を入れて。剥げた塀にペンキを塗ろう、寝食を忘れて。メダカを繁殖させよう、精を出して。

  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年03月27日

山口市だって

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 “春ですね。神戸は貧乏老人に優しくて、バス、地下鉄無料。じっとしていないで出かけなさいってことらしい。出かけましょう”というメールが神戸在住の友人から届いた。“山口市だって、無料ではないけれど老人には親切で百円で乗れます。出かけましょう”と返信した。
 山口市内はもとより、山口市発着のバスなら防府、徳山、宇部、萩あたりまで、山口市発行の『福祉優待バス乗車証』の持ち主なら百円で乗車できる。しかし、快速には乗れるが、高速と特急バスには乗れない。だから、長い旅となる。腰痛やもろもろの疾患のある人には利用するのが難しい。
 私は、もっぱら百円バスを利用している。いつも利用する市内循環バスなら、運転手さんの顔をだいたい知っている。団地の中を通るので庭先の花々を眺めたり、空き地や空家に思いを馳せる。同乗する人達にも知り合いがいて目礼を交わす。時にはおしゃべりをする。下車するとき、たいていの人は「ありがとうございました」と料金箱に百円を入れ頭を下げる。感謝する。
 二時間あればたいていの所には行ける。希望を言えば、高速と特急に乗りたい(空いてる時が多いんだけれどね)…身の程をわきまえ、百円で乗れることに感謝しよう。バスは大好きなのだ。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年03月20日

春のデパート

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 私の若い二十代の友人が結婚するという。何か贈り物をしたいと思い、久しぶりにデパートに行った。活動的でスポーツ好きの彼女に何を贈っていいのかわからなかったので、なんでも揃っているデパートに行った。
 キッチン用品で切れ味の良さそうな包丁を握って、夫婦箸を横目に見て、寝具をそっと触ってその柔らかさにうっとりとして、可愛いエプロンやスリッパに見惚れる。スカーフやハンカチの棚には、薄い黄色やピンク、水色、淡い春のカラーが満載。彼女にはなんでも似合いそうで、選べない。
 真っ白のショールカラーで胸元に春の花々が描かれたブラウスが並んでいた。可愛い、私にどうだろうか?そろりと値札を探し覗き込む。二万五千円。えっ、掌に握りこめそうなほどのジョーゼットのブラウス。いいなあー、もう一度値札を確かめると五千円とある。えっ、五千円なら買える。店員さんに聞いてみた。「これは五千円ですか」「この値札はネックレスの値段なんですよ」。よく見ればブラウスを引き立てるために細いネックレスが下げられている。値札はそこに付けてあった。
 結婚祝いは決まらないまま。もう私には年代の差がありすぎ彼女の欲するものはわからない。商品券を求めた。どうぞあなたの世界の物をどうぞ。お幸せに。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目

2019年03月13日

ある一日

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 「おい、死ぬなよ」と冷たい霙の降る朝、K氏から電話があった。「死なないわよ。私はとても元気」と言った。「やっと仕事もなく自由になったから一杯やりながら皆といろんな話をしたかったのに、誰も彼も死んじゃったじゃないか」。K氏は85歳。持病はあるが元気。ここ数年で彼の友人達は相次いで亡くなって行った。私の友人達でもあった。「寂しいなあ」「寂しいね」。霙は止み青空が見えて来た午後、私が所属している同人誌が届いた。
 始まり  新いきる
別居しました/夫が単身赴任をしました/天国へ//書類の所帯主の欄には/わたしの名前を記入します/独り居です/しがらみから/べきべきから/解き放たれて軽やかです/学生時代に夢見た暮らしです//新しい生活の始まりです/ドキドキ半分/ワクワク半分です/のんびり/終活なんてしているヒマはないわ
 新いきる、筆名です。いつも穏やかな微笑みを湛えた方です。進め!新いきるさん、そして皆様。
 冷え込んできた夕方、「大変でしたね。めげないで下さい」と私はFさんに電話した。昨年、彼女には多くの災難が降りかかった。「私の辞書には“めげる”という言葉はないわ」と朗らかな声。冷え込んできた夜、早速、私の辞書からも“めげる”を取り除いた。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)おんなの目