2019年07月03日
特別展「どきどき! ドローン・ワールド」を開催します!
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
この夏、山口県立山口博物館では、「ドローンを飛ばそう! ラジコンカーを動かそう!」をキャッチコピーに、特別展「どきどき! ドローン・ワールド」を開催します。
上空から驚きの映像を撮影する機体として一般的に知られているドローンには、各種の無線技術が詰め込まれています。無線操縦、GPSを利用した位置制御、撮影した映像の伝送などです。このように無線技術の粋であるドローンは、空撮映像だけでなく、農薬散布、鳥獣害対策、防災時の避難誘導や人命救助、測量といった様々な分野での実用化が進んでおり今後ますます活躍の場を広げようとしています。
特別展では、ドローンやラジコンカーの操作体験等を通して、これから私たちの暮らしに大きな役割を果たすドローンや無線技術についてわかりやすく紹介します。会期は8月1日〜9月1日。ぜひドローン・ワールドをお楽しみください。
山口県立山口博物館
理工担当学芸員 漁 剛志
2019年06月05日
純粋じゃないからいいんです!
▲左がルビー、右がサファイア
(標本は山口大学理学部地球科学標本室)
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
「あらあなた、その指輪のルビー、きれいね~」
「あなたこそ、そのサファイア、素敵ね~」
こんな会話を近所で聞いたことは一度もありませんが、私がこの場面にいたらこう言ってしまうかも。「ルビーもサファイアも同じ鉱物ですよ」と。さて、どういうことでしょう?
ルビーもサファイアも鉱物名は「コランダム(鋼玉)」といって、化学成分は酸化アルミニウムです。コランダムの中で、赤色のものをルビー、青色のもの(赤色以外)をサファイアとよんでいます。純粋なコランダムだと色味がないのですが、ここにちょっと不純物が混ざることによって、あの鮮やかな赤色・青色になるのです。クロムが混ざると赤色、チタンと鉄が混ざると青色に発色します。
ただ今、山口博物館ではテーマ展「目撃! 地球史40億年」を開催しています。地球史を語る岩石だけではなく、目を奪われるきれいな鉱物も展示しています。ぜひご覧ください。
山口県立山口博物館
学芸課 地学担当 赤㟢 英里
2019年05月01日
テーマ展「目撃! 地球史40億年 -岩石が語る地球の歴史-」
▲南極大陸の露岩地帯。写真提供は山口大学理学部地球科学標本室。
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
始まりました「目撃!地球史40億年」。あれ?40億年? 地球の歴史って、たしか46億年じゃなかったっけ?
そのとおり! 46億年です。地球の歴史といえば、恐竜、アンモナイトに三葉虫。しかし、これら生物化石が登場するのは今からおよそ6億年くらい前からです。では、それより前の40億年間にはいったい何があったのでしょうか?
そのなぞ解きをするのが今回のテーマ展です。主役はズバリ岩石たち。南極にインド、オーストラリアなどの岩石で、パッと見はそのへんの石ころと変わらないですけどね。実は、これらがいろんなことを教えてくれるのです。たとえば、大陸移動のこととか…。
同時展示で「土砂災害を知ろう」を開催します。風化・侵食など大地が削られていく過程もまた、地球の活動のひとつ。防災・減災の第一歩は、私たちの足元の地質を知ることです。これらの展示を通して、大地の成り立ちを知っていただければと思います。
山口県立山口博物館
学芸課 地学担当 赤崎 英里
2019年04月03日
今年は有馬喜惣太没後250年
▲「防長土図」(山口県立山口博物館蔵)
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
有馬喜惣太(1708~69)は、江戸時代の防長を代表する絵図製作者です。阿武郡生雲村三谷出身。幼いころから絵が得意で、萩藩御用絵師雲谷等達の弟子として修業を積みました。その後、腕を見込まれて藩の絵図作製に関わり、55歳で藩士に取り立てられ、「地理図師」の職名を与えらました。代表作品に、萩から江戸までの街道絵図「行程記」や、防長全域の村絵図「一村限明細絵図」(いずれも山口県文書館蔵)、超大型地形模型「防長土図」(国指定重要文化財、山口博物館蔵)などがあります。近年、人気を博している、古地図を素材にした街歩きイベントで使用されている絵図の多くは、有馬が関わったものです。
山口博物館では、有馬の没後250年を記念し、5月11日(土)に歴史探訪「古地図を片手に街を歩こう-肥中街道・山口」、5月25日(土)に歴史講座「没後250年萩藩郡方地理図師有馬喜惣太」を開催します。くわしくは博物館ウェブサイトをごらんください。
山口県立山口博物館 歴史担当学芸員 山田 稔
2019年03月06日
見た目がちがっても中身はいっしょ
▲淡い水色のベリル「アクアマリン」
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
3月になると冷え込むことも少なくなり、草木の芽生えなどいろいろなところで春の訪れを感じることができて、なんだかワクワクしてきます。そんな春の訪れにピッタリな、やわらかな色味をもつ鉱物を紹介します。
それはアクアマリン。3月の誕生石で、淡い水色の鉱物です。アクアマリンはベリル(緑柱石)とよばれる鉱物のひとつで、ベリリウムという元素を含むことが特徴です。ベリリウムは、ベリルから発見されたことから名付けられていて、宇宙航空材料や宇宙望遠鏡などに利用されている軽金属です。アクアマリンは宝石としての利用だけでなく、ベリリウムの重要な資源鉱物でもあるのです。
さて、みなさんが知っているあの宝石も、実はアクアマリンの仲間・ベリルです。濃い緑色のエメラルド、ピンク色のモルガナイト、黄金色のヘリオドール、赤色のレッドベリル。どのベリルも美しく、ここに書き並べるだけでワクワクしてきますね。
山口県立山口博物館 学芸課地学担当 赤﨑 英里
2019年02月06日
VR(仮想現実)技術
▲「ミニ維新体験館」展示風景
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
VR(仮想現実)技術をご存知でしょうか。CG(コンピュータグラフィック)などで作り出された仮想世界に入り込んでいるような体験をさせる技術です。
CGやセンシング技術の進化に伴い、高精細3次元CGディスプレイを搭載したVRゴーグルが登場し、また、映像には人の動きなどを感知するセンサーからの信号が反映されるようになったことから、より臨場感のあるVR体験が出来るようになりました。映画やゲームなどのアミューズメント分野だけでなく、教室にいながらの工場見学や外科手術の体験など、教育や医療などの分野でもVR技術が活用されており、今後、幅広い分野での応用が期待されています。
山口博物館には、昨年開催された「山口ゆめ花博」で人気を博した松下村塾や功山寺挙兵、長州ファイブをVRで体験できるコーナーが移設されています。この機会にぜひ、VR技術をご体感ください。なお、体験には、当日会場での予約が必要です。
山口県立山口博物館 理工担当学芸員 漁 剛志
2019年01月09日
12月3日が元日に!? ~1年327日!~
▲日本最初の太陽暦のカレンダー
(明治6年)山口県立山口博物館蔵
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
皆様、新春おめでとうございます。皆さんは穏やかな正月を迎えられたでしょうか? 今からおよそ150年前は、大混乱の正月だったようです。明治5年(1872年)11月9日、明治政府は突然、その年の12月を2日で打ち切り、翌12月3日を明治6年1月1日にするという大変革を発表しました。旧暦(太陰太陽暦)から新暦(太陽暦)への突然の切り替えです。このため明治5年は327日間になって(12月はわずか2日間しかありません)、大きな混乱が生じました。
日本では飛鳥時代の頃から千数百年の間、カレンダーに月の満ち欠けを取り入れた「太陰太陽暦」(太陰とは月のこと)を使っていましたが、明治6年(1873年)から欧米と同じ「太陽暦」を使うことにしました。年の初め(1月1日)は旧暦と太陽暦でかなりずれがあり、旧暦の明治5年12月3日が太陽暦1873年1月1日だったのです。
山口県立山口博物館 天文担当学芸員 松尾 厚
2018年12月05日
寄贈された動物資料
▲クマサカガイ 自ら殻に他の貝殻をつける巻貝
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
山口博物館には多くの標本が寄贈されます。個人や機関が長い年月をかけ、調査研究のため、採集し標本にした資料、海外の動物コレクション、身近な鳥たちの巣や、ハチの巣、中には古い民家の納屋でミイラになった動物なども寄贈されました。すべて燻蒸処理を行い、整理し、収蔵庫に収めます。1万点を超えるコレクションの寄贈などもあり、年間を通して行う整理・登録作業は、博物館サポーターの皆さんのおかげで滞りなく進んでいます。
12月14日(金)から来年3月17日(日)まで、「寄贈された動物資料」と題するテーマ展を開催します。この10年間に寄贈された貝類、昆虫類、動物剥製、頭骨標本、巣や動物の痕跡を示す資料、動物写真などの中から特に資料的価値に高い約2千点を展示します。
生物の多様な世界がわかる美しいコレクションをご堪能ください。
山口県立山口博物館 動物担当 田中 浩
2018年11月07日
古代の衣服づくり
▲滑石製紡錘車
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
写真は古代に糸をつむぐときに用いたはずみ車で、紡錘車と言います。円盤形や円錐の上部を切ったような形をしています。大きさは径4~5センチで、石製のものが一般的ですが、土製や金属のものもあります。中央に棒を通す穴があり、棒をとおしてコマのように回転させることで、糸によりをかけます。
この紡錘車は岩国市周東町から出土したもので、滑石製で線が刻んでありますが、紡錘車の中には絵や文字が書いてあるものもあって、古代の人たちが糸つむぎの仕事を大事に考えていたことが伝わってきます。
紡錘車の存在は同時に織物の普及を示すもので、日本では弥生時代頃からに大陸から伝来しています。山口博物館・考古常設展示室で展示していますので、ぜひ御覧ください。また、これに関連して山口博物館では12月1日(土)に開催する講座「古代の機織りでコースターを作ろう!」の参加者を募集しています。詳しくは山口博物館ホームページを御覧ください。
山口県立山口博物館 学芸員 荒巻 直大
2018年09月05日
ハリガネムシ
▲水辺にきて腹からハリガネムシが出るハラビロカマキリ
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
写真は、ハラビロカマキリの腹からハリガネムシが出てきて、流れの緩い小川の中に入ろうとしているところです。ハリガネムシは、類線形動物の仲間で寄生虫の一種です。なぜこんな生き物が多くのカマキリの中にいるのか? これには驚くような流れがあります。
ハリガネムシは、水の中でオスとメスが出会い、交尾し卵を産みます。ふ化した幼生は、水生昆虫であるカゲロウなどの幼虫などに食べられますが、その体内では腸の壁にとりつき、成長せず袋に包まれます。カゲロウは成虫となり飛んで草むらなどにいた時に、カマキリに食べられます。カマキリの体内に入り、ハリガネムシの幼生が成長を始めます。幼生は、カマキリの体内の体液が流れる組織の中で成長し、成体になるとお腹を破り出てくるのです。ハリガネムシの成体は水中生活をするため、カマキリを水辺に誘導するメカニズムをつくり出しているようです。
生き物の世界は不思議に満ちています。
山口県立山口博物館 動物担当 田中 浩