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店長情報

2018年09月19日

「驚異の超絶技巧!」展


▲髙橋賢悟 「origin as a human」 2015年

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 おびただしい数の極小の花で形作られた頭蓋骨。花のひとつひとつは、実物を原型としてアルミニウムで鋳造されたものだ。元になった花は、花壇でもよく見られるワスレナグサ。
 「私を忘れないで」という名をもつ花に覆われた頭蓋骨は、作家によれば、ネアンデルタール人のそれを模したものだという。
 ネアンデルタール人の埋葬跡からは、骨の化石とともにノコギリソウなどの植物の花粉が大量に発見されている。ゆえに彼らは死者を悼む心をもち、遺体を花とともに葬ったとする説が唱えられている。また、最近の研究では、2万数千年前にすでに滅んでしまった彼らのDNAが、私たちのDNAのなかにわずかに残されているという。
 作家はそれらのことを念頭に、遠くネアンデルタール人から続くかもしれない感情のかたちを作り上げた。硬そうでいて、触れば崩れてしまいそうにも見える質感。まるで結晶化した夢―のような作品である。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年08月15日

毛利敬親展


▲展示室風景

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 展覧会に新たな展示作品が加わった。毛利家伝来の「唐獅子図屏風」である。左隻のみの展示だが、大きな画面に圧倒される。
 展示室の畳に腰かけ、解説用の写真パネルを眺めていて、ふと気づいた。パネルで見る左隻は右隻に比べると構図が少し横に間延びしていないか? 2頭の獅子が並ぶ右隻は構図が過不足なく決まっているのに。
 しかしガラスケース内の実物を見れば、そんなことはまったくなく、疾駆する1頭の獅子が画面の真ん中にぴったりと収まっている。画家は、こうして立てられた屏風のかたちの寸法を念頭にこの獅子を描いたに違いない。平べったく横に広げられたかたちの寸法に基づいて描いてはいないな、と思う。
 だとすれば、パネルで見て構図がビシッと決まっているような右隻は、実際に展示されるとどんなふうに見えるのだろうか。ちょっと想像が膨らむ。両方並べて見たかったなあ、と思った。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年07月18日

激動の幕末長州藩主「毛利敬親」展 


▲五箇条御誓文 宮内庁書陵部蔵

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 「五箇条のご誓文」という単語と「広く会議を興し万機公論に決すべし」という文言は、中学校の社会の時間に覚えた。
 先生が授業中に読み上げた「…バンキコウロンニケッスベシ」という歯切れのいい語調は、意味はよく判らないまま、中学生の耳と頭のなかに響き通っていったのだろうと思う。
 「五箇条のご誓文」とはどのようなモノなのか、その当時はまったく気にもしなかったし、それがモノとして存在するのかどうかも知らなかった。 
 明治元年3月14日、紫宸殿における天神地祇御誓祭での奉読というかたちで発布されたそれは、明治天皇の書道ならびに歌道師範であった有栖川宮幟仁親王によって清書されたモノとして、宮内庁に残されている。それが本展で展示される。
 かつて習った明治維新に関わるさまざまな事柄が、ひとつひとつ目に見えるモノとして確認できるたいへん興味深い展覧会である。ぜひご覧いただきたい。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年06月20日

「屏風絵名品展」開催中


▲展示室風景

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 文豪谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」は、日本家屋のほの暗い内部空間に置かれた器物やしつらえの美を余すところなく語る珠玉のようなエッセイとして名高い。そのなかに、金屏風の「沈痛な美しさ」を紹介するところがある。
 …大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光が届かなくなった暗がりの中にある金屏風が、幾間を隔てた遠い遠い庭の明かりの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返している…
 この「夢のように照り返している」姿を少しでも想像してもらえるようにと、展示ケース内の照明を昼間の白く明るい光、夕方の落ち着いた赤い光、夜の室内のほのかな人工の光の3パターンに分け、およそ30秒ごとに変化させている。
 畳の上に座り込んでその見え方の違いに目を瞠っていると、金屏風本来の夢のような姿がわずかにも現れ出てくるようで、なかなか腰を上げることができなかった。
「屏風絵名品展」は今月6月24日まで。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年05月16日

生誕130年 小林和作の世界


▲小林和作 「秋晴」 1957年

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 小林和作は1888年に山口市の秋穂で生まれた。大きな塩田地主の跡取り息子だった。 
 初め京都で日本画を学ぶが、30歳を過ぎて洋画に転向する。この頃に莫大な資産を相続するが、後に財産を失って尾道に移住。ほんの数年いるつもりだったが、そこが生涯の創作活動の地となった。
 和作は全国各地を水彩で写生してまわった。年間200枚くらい描いたという。それらをもとに、アトリエで油絵具の豊麗な色彩の風景画を数多く描いた。多作家であり乱作家であるとの東京辺りの評判も聞こえてくるが、「私は臆せず絵をかく。それがために老来多少の進歩もしているらしい。自惚れかも知れないが七十歳以上の画家でまだ将来の飛躍を楽しめるのは私一人ではないかと思う」と言い切った。
 物事をニ三割方誇張する自惚れともども、「老人はホラを吹け」と話すような和作の向日性こそ、老齢になっても衰えない創作意欲の源だったのだろうと思う。  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年04月18日

浦沢直樹展



実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 今から20年ほど前のことだろうか、「MASTERキートン」を初めて単行本で読んだ。そのときの興奮は今もはっきりと記憶に残る。ストーリーが断然おもしろく、絵は魅力的で、凄味もあった。
 当館での「浦沢直樹展」開催が決定してからもう一度読み直してみて、やっぱり同じようにおもしろかった。しかし最後の場面に出てくるフロッピーディスク(!)には、時代の変化をまざまざと感じざるを得なかった。以前は当たり前のように使用されていた道具が、今では遺物と化している。最近、現役大学生にフロッピーディスク知ってる?と聞いたら、見たことないと答えた。
 作中にある「プロにはなれない、せいぜいマスターどまりだ」という言葉。なんだか自分のことが言われたような気がして、思わず来し方を振り返ってみれば、ざわついた気持ちにもなるけれど、でもマスターに達しているならばよしとすべきか、と思い直した。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年03月21日

250年前の巨大地図


▲会場風景

実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 現在、コレクション展示室で「防長土図」が展示されている。山口県立山口博物館の所蔵品で、萩藩の郡方地理図師・有馬喜惣太が作ったもの。縦横3.8×5.6メートルという立体地図だ。
 会場には小型の双眼鏡が置いてあって、自由に使って見ることができる。地図に「山口市」とは書いてないが、椹野川をさかのぼってだいたいの見当をつけて、そこを起点に、よく登りに行く蕎麦ヶ岳を見つけてみようと目を凝らした。
 仁保から一貫野へ通じる道らしき赤い線を見つけ、そこをたどって、目指す山とおぼしきあたりを見つめる。稜線に黒い線が走っている。パンフレットを読むと、黒線は村境、黒二重線が国境、白点線は宰判境らしい。
 村境といえば、蕎麦ヶ岳の山頂近くの稜線に、大内村と掘られた小さな石柱があった。なるほど、この地図の通りなんだなと感心した。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年02月21日

デンマーク・デザイン展



実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)

 座り心地のいい椅子。その感覚は、座った瞬間に、背中と腰と太ももの裏側から伝わってくる。
 就職したばかりの頃、美術館に置かれている椅子が、なかなか座り心地がいいなと感じた。その椅子は、今では布地が張り替えられて、木部の色味も変わっているけれど、相変わらずロビーや展示室に置かれている。肘置きのカーブの手触りがやさしく、高さも寛ぐのにちょうどいい。
 チラシに出ているフィン・ユールの優美な椅子を見ていて、形はまったく異なるけれど、美術館の椅子の雰囲気と座り心地を思い出した。
 フィン・ユールの椅子の実物を初めて見るのも楽しみだが、座ることはできないので、見るだけで背中と腰と太ももの裏側の感覚を想像するしかない。他にもハンス・ヴィーイナなどの椅子も気になる。
 展覧会は今月2月24日から始まる。座り心地を体験することができる椅子も置かれるとのこと。楽しみに待ちたい。
県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

Posted by サンデー山口 at 00:00Comments(0)サンデー美術館

2018年01月24日

コレクション展「昭和の家族」


▲松田正平「M夫人像」1953年

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 開催中のコレクション展「昭和の家族」のなかで、香月泰男と松田正平の作品が紹介されている。
 会場の解説を読むと、香月は、新婚後里に帰る風習に反し婦美子夫人が「帰りません」と言うのを聞き、逆立ちして大喜びしたという。また、松田正平は精子夫人とパリで知り合った。夫人は、パリ仕込みの技術をいかした洋裁教室を開き、松田家の家計を支えたという。
 これを読みながら、香月は、夫人が家にいないと落ち着かず、仕事も手につかなかったということや、松田が教師として忙しかったとき、夫人が「このままじゃええ先生にはなれるが、絵かきにはなれん。私は絵かきと結婚したんじゃ」と言い、それを聞いて松田は教師をやめた、という話も思い出した。
 香月も松田も、それぞれ夫人とともに自分の家族のなかにあってはじめて、今ある作品を描くことができた。そう思うと、絵が少し違って見えるような気がした。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

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2017年12月20日

来年2月末からの「デンマーク・デザイン展」


▲「デンマーク・デザイン展」プレチラシ

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 2017年の企画展は今月12月10日で終了した。次の企画展は、来年2月末から始まる「デンマーク・デザイン展ヒュゲのかたち」。
 ヒュゲとは「居心地のいい時間や空間」という意味を表すデンマーク語。デンマークの人々は、親しい友人や家族と室内で過ごす穏やかなひとときを何よりも大切にしてきたという。
 こうした生活感情が国民の間に生まれてくる背景には、忙しく働きまわるだけでなく、生活そのものを楽しみ、時間の質を上げてゆこうとする意欲があり、そうすることを後押しするような社会の成熟があったはずだ。そしてこの生活感情に寄り添うような、洗練されたデザインの机、椅子、照明などの需要も高まっていったのだろう。
 展覧会では、ぜひ、かたちになった「ヒュゲ」を体感してもらいたい。アンデルセンやレゴだけでない、デンマークの知られざる姿が見られるだろう。来年も県美にご期待ください。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫  

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