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2000年01月01日

No.42「おばあちゃんは木になった」

No.42「おばあちゃんは木になった」

ポプラ社
著者・写真:大西 暢夫
 岐阜県徳山村。かつて1600人もの人々が暮らしていたこの村は、日本一大きなダム建設計画に伴い、地図から消えました。村民は街へ引っ越しましたが「すぐにダムができんのなら、もう少し生まれ育った村でくらしたい」と戻ってきた人たちがいます。
 お正月に備えて、収穫したトチの実の天日干しに精を出す広瀬はつよさん。握りこぶしほどもあるぼた餅や、茶碗に盛り上げた炊きこみご飯で村の写真を撮り続ける著者をもてなす徳山じょさん。80歳を過ぎても軽々と沢を渡る小西政治郎さん。どの表情からも、この村に暮らす喜びがにじみ出ています。
 「みんな街に行ってまったけど、徳山の神さまは今までどおりおってくれとる」と夕陽に向かって手を合わせていたはつよさんは、ある夏、この村で天寿を全うされました。恐竜のような重機が家々を取り壊していく中、主を失いぽつんと残ったはつよさんの家の脇には、小さなトチの木が芽を出していました。はつよさんはこの村で、大好きなトチの木になったのです。
 この原稿を書いていた9月25日、偶然にも「徳山ダム、今日から貯水開始」のニュースを聞きました。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)えほんのとびら
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