サンデー山口

童心社
作：いわむら かずおこ
　子どもの頃、年末の一番の楽しみは祖父の家へおもちつきに行くことでした。吹きぬけの土間の台所は、朝早くか
らもち米の蒸し上がるにおいでいっぱいでした。
　この絵本を開くと、あの頃の台所のにぎわいがよみがえります。力強い杵さばきと、それに合わせて上手にこね取りをするねずみ夫婦の息の合った仕事ぶりは、おじとおばの姿に重なります。まわりで声援を送りながら、指についたおもちをこっそり食べたり、もち取り粉で手も顔も真白にしているねずみのきょうだいの様子は、まるで子どもの頃のいとこや自分の姿のようで懐かしく思い出されます。
　ねずみたちのお昼ごはんはつきたてのおもち。きなこやあんこやくるみをまぶしたおもちのおいしそうなこと！
たくさん働いたあとの食卓は箸もおしゃべりもはずみます。
　夕方になって雪が降りはじめました。年越しの雪になりそうです。ねずみたちの一年が静かに暮れていきます。

（ぶどうの木代表・中村佳恵）