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2003年02月23日

札の辻・21

 『御無沙汰しております。お元気でござりましょうか。今年は移築工事の関係でフキノトウが出ませぬ。あしからず。お風邪を召しませぬよう』
 菜香亭のおごうさんから、例年、立春過ぎに届くフキノトウのお詫びである。
 菜香亭のフキは、秋田フキを株分けしたもので、北海道のコロポックルの伝説や、秋田民謡の相合傘になるフキのごとく、温暖な地方のフキに比較して大型である。
 北陸から奥羽に至る地域は、その峻烈な気象から生まれた独特な風土圏を形成する。吉田寅次郎(松陰と呼ぶより本名の方が人間的な親しみがある)は、さいはての竜飛岬に至る東北遊歴の旅で、東北人に、自然が育てる象徴的な忍耐強い人間像を知った。
 みちのくの冬は冷厳な氷雪に囲まれるが、その中に眠る豊沃な黒土の下では、春を息吹く若い命がふくらみつつある。この地方でバッケと呼ぶフキノトウで、冬眠からさめたツキノワグマが、またクマを追うマタギ(猟師)たちも、雪をかきわけてバッケを探す。
 白と緑、冬から春へと季節の廻り舞台が見せるあざやかな色彩のコントラストが美しい。
 山形県西村山郡西川町にある山菜料理店「出羽屋」の佐藤主人は、「山国の春は行きつ戻りつするが、舞い戻った寒さの中で見つけたフキノトウを、醤油に地酒を利かせて煮つめ、熱燗と熱いメシで口いっぱいに春を食うのだ」と話す。
 菜香亭の秋田フキの群落は根強さを持っている。掘り起こして移築先の庭にも移植して欲しい。やがて北国からくる観光客も喜ぶ。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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