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2003年04月27日

札の辻・21

 すでに鯉のぼりの空となり、間もなく風光る5月である。
 庭隅に30センチほどに育ったマロニエの若木があり、その枝先の筆の穂に似た固い蕾が割れ、薄みどり色で幼子の手のような葉をひろげた。
 3年前の秋、パリの日本文化館で催された萩焼展に参加したとき、セーヌ河畔にあるホテル、ニッコー・ド・パリ前のマロニエ並木に落ちていた丸っこい実を拾い、無造作に植えておいたら芽を出してきた。
 マロニエと日本のトチノキは、共にトチノキ科の落葉高木で親せきである。
 トチノキも5・6月頃には枝先へ長さ約20センチに及ぶ円錐状となった白い5弁の花をつけ、秋になれば黄葉して栗に似た実を結ぶ。
 松尾芭蕉の「奥の細道」を観光したとき、出羽三山の羽黒山、月山、湯殿山には、トチノキが多く茶店でトチの実でつくるトチ餅を売るが、縄文時代は主食であった。
 パリのマロニエについては、永井荷風が「ふらんす物語」の中で『五月に至りて白い花をつける。その形は大いなる房のごとく、かの国の人はこれを例えるに宮殿の天井より吊り下げたる白銀の燭台としたり。秋来れば物の哀れを感ずること他の草木にまさりて早く、朝夕の冷たき霧の、街の敷石をうるおすに先立ちて落葉す』と書いている。
 マロニエの実を拾ったのはパリを立つ日で、日本に比較して緯度の高い街には冬が近づいていた。この朝もセーヌ川には河霧が深く、対岸のラジオ・フランスの放送タワーもかすんで見え、そこはかとなく旅愁を感じる風景だった。  (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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