2003年12月03日
もう一つの話 1
9月に北京に行った話は、一度この欄に書いたが、もう一つ披露したい話がある。故宮に見学に行き、迷路みたいな造りを右に左にと気ままに進んでいると、ひょいと中庭に出た。すると、どこからか中国人の男が現れて、私達に日本語で「こちらにお宝があります。愛新覚羅様がいらしてます」と言った。私は、愛新覚羅については、清王朝の皇帝の姓で、溥儀は満州帝国の傀儡の皇帝くらいしか知らない。興味を覚えて、静々と男の後について行った。
小学校の教室くらいの部屋で、恰幅の良い(肥満体ではない)、穏やかな風貌の60代後半の男性が筆を手に一心に字を書いていた。案内してきた男がお茶を私達に勧めながら「この方は、『いかく』とおっしゃいます。溥儀様の……なんとかかんとか(系譜を説明したが、覚えていない)。この執務室に出ていらっしゃることは、めったにありません。お好きな字を書いてもらって下さい」。そして、値段の話を延々と始めた。その横で、皇帝の末裔の方は、元気に字を書き続けている。その字は颯爽として味があり、私は好きで見とれていた。書いてもらいたくなった。しかし、ちょいと値段が私達にとっては高い。友人が男に「負けてもらえまいか」と言った。男は「幾ら持っているか」と聞いた。友人は「7万」と答えた。男は、そのことを皇帝の末裔の耳に囁いた。彼は静かに鷹揚にうなずいた。私は値切ったことが、日本の恥にならないか、国際問題にならないかと怯えたが、友人は、約10万円値切って軸を手に入れた。
小学校の教室くらいの部屋で、恰幅の良い(肥満体ではない)、穏やかな風貌の60代後半の男性が筆を手に一心に字を書いていた。案内してきた男がお茶を私達に勧めながら「この方は、『いかく』とおっしゃいます。溥儀様の……なんとかかんとか(系譜を説明したが、覚えていない)。この執務室に出ていらっしゃることは、めったにありません。お好きな字を書いてもらって下さい」。そして、値段の話を延々と始めた。その横で、皇帝の末裔の方は、元気に字を書き続けている。その字は颯爽として味があり、私は好きで見とれていた。書いてもらいたくなった。しかし、ちょいと値段が私達にとっては高い。友人が男に「負けてもらえまいか」と言った。男は「幾ら持っているか」と聞いた。友人は「7万」と答えた。男は、そのことを皇帝の末裔の耳に囁いた。彼は静かに鷹揚にうなずいた。私は値切ったことが、日本の恥にならないか、国際問題にならないかと怯えたが、友人は、約10万円値切って軸を手に入れた。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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