2004年02月21日
頑張る姿がみんなを元気に
新興住宅や企業が建ち並ぶ新山口駅南地域の一角に、学生からお年寄りまでが集い、笑い声の絶えない交流サロン「サロン・ド・リトルベル」がある。ここを切り盛りしているのは、脳梗塞の後遺症と闘う一人の女性・えっちゃんこと末岡悦子さん(59)。せっせとお茶を運び、訪れる人をいつも笑顔で迎える。重度障害を克服しながら、生き生きと暮らす彼女の姿は、周囲の人々に元気と勇気を与えている。
町内の病院に調理師として勤務していた末岡さんは、3年前に突然、脳梗塞で倒れ入院。半年後に自宅に戻り、動かなくなった左半身のリハビリに励んでいた。ある日、親しい友人から「カギを開けるだけでいいから、友達のパソコン教室を手伝ってくれない?」と持ちかけられた。案内された先は黄金公園そばにある「サロン・ド・リトルベル」だった。
このサロンは6年前、民生委員などを務める橋本美和子さん(48)が自宅1階に開設。ボランティア講師による各種教室の会場や地域の集いの場として、幅広い年代の人に利用されている。「こんな私に人の世話なんて」とためらったが、「心配いらない。大丈夫」という橋本さんの言葉に背中を押された。
末岡さんの仕事は、サロンを開設する火・水・木曜日にカギを開けること。杖なしでは歩けず、ちょっとした段差を上がるにも苦労するのだが、カギを持つ自分が行かなければ誰も中に入れない。責任感の強い末岡さんは、休むことなく通った。
そうするうちに、掃除や片付け、お茶の接待といったできる限りのことを進んでこなすようになった。元来働き者の彼女にとって、それがいいリハビリにつながった。室内では杖を使わずに動き、ちょっとした段差も苦にならなくなってきた。さらに、自らもパソコンや押し花教室に挑戦したり、おしゃれや外出も楽しむように。サロンに通うことが生きがいになった。
そんな彼女の姿に、事あるごとに手を差し伸べようとしていた周囲の対応も変化。助けを求めるまでは手出しをしない。半身まひを個性として受け止め、健常者と同じように付き合ってくれるのだ。「普通に接してもらうことが、一番うれしい」と末岡さんはいう。
また彼女は、若者たちの良き相談相手にもなっている。末岡さんを母のように慕う岸和田竜男さん(24)は「えっちゃんに会うと、自分も頑張れるんだと勇気がわいてくる。ついここに立ち寄ってしまいます」と話す。
「サロンとの出会いで障害とうまく付き合えるようになった」と語る末岡さんは、半身まひを克服しながら、きょうも人々にパワーを届けている。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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