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2004年04月18日

札の辻・21

 ことしの桜は早咲きの割合には花のいのちが長かった。しかしいつの間にか花筏も消えて葉桜となり、風光る川面に若鮎の影が走る。
 鮎といえば東京神田の古書店で、丹羽文雄の出世作「鮎」の初版本を手に入れた。
 上京した機会には神保町の古書店街を漁る。歩いていると知人によく会う。いつか三省堂前で山の上ホテルへ行くという末永弁護士と出会った。
 古書店は文学、古典籍、歴史、思想、美術、自然科学などの各部門に大別され160軒もある。
 「鮎」は文藝春秋の昭和7年4月号に発表された小説で、昭和10年に「鮎」のほか「鬼子」「贅肉」を収め処女短篇集「鮎」として出版された。
 「鮎」は私小説で、作者が早稲田大学の学生時代、すでに離籍していた生母の不倫に手を焼くさまを描いたもので、新進作家として文壇に登場する。
 題名が語るように、長良川河畔柳ヶ瀬の料亭で鮎の田楽をつつき、銘酒富久娘を飲みながら、くだくだと生母の愚痴を聞くのだが、母子の心情が複雑にからみあう作品である。
 巻末に丹羽文雄自筆のあとがきがあった。
 ・・ここに収めた短篇は私の文筆生活の中で、もっとも初期にあたる作品である。「鮎」が処女作とされているが、いわゆる文芸雑誌に発表した最初という意味で、同人誌にはすでに書いていた・と。大変な悪筆で読みづらい。
 ともあれ神田は若い時を過ごしたわが思い出の町、あの頃駿河台下から見えたニコライ堂も今はビルに隠れた。古書店街に懐旧が残る。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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