サンデー山口

　東京都美術館で開催中（～4月4日）の第44回「日本現代工芸美術展」で、作品「恵」（金属）が本会員賞を受賞した。「この賞を受賞すると、同展の審査員資格が得られる。大変名誉なことでうれしい反面、責任の重さも痛感する」と気を引き締める。
　受賞作品は高さ1㍍10㌢。鉄や真鍮、銅などを叩いて形にしていく「鍛金技法」を用い、雨、雲、大地からあふれる水をシンプルに表現た。「水の循環なくして万物の生命活動は成立しない。大地を潤す雨はプランクトンや植物を始め、人間の生命活動にまで大きな影響を与える。今回は、こうした生命の根源に迫ってみた」と説明。どうしたら第3者に自分の意図が伝わるか、アトリエで一日中考え込んだこともあり、制作には2カ月以上を要した。
　金属加工に興味を持ったのは高校時代。友人に誘われ入部した自転車部でオリジナルのフレームを作りたいと思ったのがきっかけ。大学は金属の専門コースのある高知大学を選び、そこで〝鍛金漬け〟の毎日を送った。「コツコツと叩いていくと、徐々に形になる。地味で時間のかかる作業だが、そこが魅力」
　9月にはＣ・Ｓ赤れんがで初の個展を開催する。


1962年小郡町生まれ。高知大学卒業後、東京芸術大学大学院で工芸を専攻。02年には県芸術文化振興奨励賞を受賞した。日本現代工芸美術展本会員、日展会友、広島市立大学芸術学部助教授。42歳。