2005年04月22日
増え続ける救急車の出動
「救急車はタクシーではありません」--。総務省消防庁は先月中旬、増え続ける救急出動の回数を減らすため、救急車有料化の本格的な検討を開始した。山口市、小郡町、阿東町を管轄する山口地域消防組合でもここ数年、救急出動件数は増加傾向にあり、昨年は初めて6千件を突破。このままのペースで増え続けると、現場への到着が遅れるなど出動に支障が出る恐れもあり、同組合では正しい救急車の利用を呼びかけている。
消防庁が救急車有料化の検討を始めた主な原因は、緊急度の低い出動が増えているため。実際には自家用車やタクシーを使って病院に行くことの出来る程度の病気・けがなのに、「無償で連れて行ってもらえる」「救急車で行けば、待たずに診察してもらえる」などの理由で、安易に救急車を呼び出す人が大都市を中心に後を絶たず、本当に緊急を要する出動要請に支障をきたす恐れも出ているという。
山口地域消防組合は、救急車を中央消防署と南消防署に各2台、北消防署と東出張所に各1台の計6台保有。約100人の救急隊員(うち30人が救急救命士)で患者の搬送業務などを行っている。緊急度の低い出動については「大都市ほど問題は深刻ではない」としながらも、「以前と比べ増えているのは確か。このままにしておくと、必ず支障は出てくる」と危機感を募らせている。
同組合の出動件数はここ数年右肩上がり。00年に4723件だったのが、01年には4910件、02年には5350件と増え続け、昨年は6146件を記録。この5年間で約1・3倍の伸びを見せている。また、昨年出動件数のうち、約半数にあたる2766件が救急車で搬送されても入院の必要がない「軽症」だった。
これらの数字だけで緊急度の低い出動要請が増えたとは言えないが、現場の隊員は「なぜ、わざわざ…」という場面に出くわすことが多くなったと実感している。ある救急救命士は「具合が悪くなった」という通報を受けて現場に急行。すると、入院道具一式を抱えた通報者(=急病人)が自宅前で平然と待っていたという。救急救命士は「タクシー代わりという感じ。通報の段階で症状を確認するが、人命が関わっているので『出動できません』とむげに断ることも出来ない」と苦しい胸の内を明かす。
このままのペースで出動件数が増えると、緊急時に対応できなくなる恐れが出てきているため、同組合は今週、組合のホームページに正しい救急車の利用を呼びかける注意書きを掲載した。同組合警防課は「当組合は消防庁の定める車両数、隊員数より多い数で業務にあたっている。それでも出動が重なり、手薄になる事が月に何度かある。救急車は急いで病院へ搬送しなければならない場合や、他に病院へ搬送する手段がない場合に活用するもの。正しい利用を心掛けてほしい」と呼びかけている。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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