2005年11月16日
居蔵造りの町並みに 知る人ぞ知る プチ美術館
白壁の町並みを残す阿知須縄田地区に、趣味の手づくり品が並ぶ空き部屋を、一般に開放しているお宅がある。明治後期に建てられた白壁の家に住む河野梅代さん(68)は、自身のリハビリのために手芸にいそしみ、できた作品を貴重な骨とう品とともに披露。展示品を入れ替えては、来訪者を快く迎え入れている。「わぁすてき。こんなところがあったなんて」――口コミで訪れる人々の声が、静かな通りに今日も聞こえる。
かつて石炭などを運ぶ回船業の港町として栄えた阿知須。港があった同地区で代々回船業を営んできた河野家も、なまこ壁と格子戸の調和が美しい代表的な「居蔵造り」の家。当時のままを残す建物だけでも一見の価値があるが、河野さん宅はそれだけではない。色とりどりの小さな着物や古布でできたかわいらしい小物、古民具に細工を施した味のある置き物などを座敷部屋に年中展示し、気軽に見学させてくれるのだ。たいてい玄関は閉まっているが、呼び鈴を押すとにこやかに河野さんが迎え入れてくれる。
展示を始めたきっかけは、病床に伏した母親の自宅介護だった。寝たきりの母に少しでも変わった景色を見せようと、蔵に眠る骨とう品などを出しては部屋に飾っていたのだが、これが往診に来る医師や来客に好評。「こんなもので人が喜んでくれるのなら」と、毎年11月に開かれる恒例の催し「あじす街角ぎゃらりー」の民家開放第1号として、8年前からイベントに参加。母が亡くなった翌年から、空き部屋を常設展示場にして年中開放するようになった。
「リウマチじゃからね、抜き針でないと縫えんのよ。力が入らんから人の何倍も時間はかかるけど、ほかにできることもないし、これがいいリハビリになるの」。手芸を始めたのも同じ年。自宅で和裁の仕事をしてきた河野さんは7年前にリウマチを患い、以来、リハビリも兼ねた小物づくりに没頭するようになった。小さな着物なら椅子に座って縫え、痛む足も曲げなくてすむ。
できた作品を珍しい骨とう品などとともに飾っていくうち、河野家の“プチ美術館”は口伝えで知られるように。河野さんが作る着物は、ミニチュアとはいえ本格的なもの。譲って欲しいと頼まれることもしばしばだ。最近では手芸と木工に取り組む2人の仲間も加わり、部屋はさらに魅力を増している。「高価な物はないけど、おもしろい物はたくさんあるからねぇ。いつでも寄って下さい」と河野さん。
「あじすふれあいまつり」 「あじす街角ぎゃらりー」
20日(日)、第19回「あじすふれあいまつり」が午前9時から午後3時までJR阿知須駅前と阿知須商店街で、第9回「あじす街角ぎゃらりー」が午後4時まで、同商店街と居蔵造りの街並み周辺で開かれる。
ふれあいまつりは、名物「ジャンボ釜」の炊き出しをはじめ(会場=元気ハウス)、駅前ステージで繰り広げられる多彩なイベント、もちまき、地下道での落書きなど楽しい催しが盛りだくさん。豪華景品が当たるスーパービンゴ大会(先着500人)は午後0時半からで、午前10時半から本部でカードが配布される。駅前の通りは歩行者天国になり、さまざまなバザーが行われる。また、JA山口宇部阿知須支所では「農業まつり」がある。
一方、白壁の町並みをギャラリーに見立て、居蔵造りの旧家などに趣味の作品を展示する街角ぎゃらりーには、河野さん宅など37の民家や商店が参加。色鮮やかな「ひなもん」を中心に、古布小物や和紙人形、竹細工、骨董品、写真などが並ぶ。この他、毎年人気のフリーマーケット(午後3時まで)もある。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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