2006年03月08日
扉を開けるもの
ふとした時、たとえば道の角を曲がって白い犬と出くわした時、熱いコーヒーにミルクを垂らした時、指をけがして溢れ出る血を唇で吸い、金気臭い匂いがした時…私の心や、頭の中の記憶装置が動き扉が開く。
それは、思い出という絵を伴って現われてくる。私はしばらくその思い出の絵の中にいる。懐かしさに浸っていると今度は、その時感じた心の動きが蘇ってくる。それらのほとんどは、幸せな楽しいものではない。嫉妬や屈辱、求めるのに得られない寂しさ、そんなものだ。若いころは欲望に満ち溢れていたので苦しみを感じた事がいっぱいあった。なのに思い出の絵は、幾つかの出来事しかつれてこない。辛かった事の大部分は、私の記憶から消えている。私は忘れるという恩寵に浴している。
ある日、金色に近い毛の色をした猫が塀の上で丸くなって寝ているのを見た。その瞬間心の扉が開き、17年飼った猫のことを思い出した。猫はこの金色の猫のようにいつも丸くなって眠っていた。思い出の猫をしばらく眺めていたら、突然、猫が死ぬ時に苦しんだことを思い出した。胸がつまり、私は急いで記憶の扉を閉めた。
寒い日が続くと、また死んだ愛猫に会いたくなった。しかし、どうまぶたを閉じても、可愛いあの猫が思い出せない。あの時、記憶の扉を開けたのはあの金色の猫だ。金色の猫に会わねばならない。風の吹く外に出た。何が過去の扉を開けるのかは、まったくわからない。扉はふっと、何気なく開く。
それは、思い出という絵を伴って現われてくる。私はしばらくその思い出の絵の中にいる。懐かしさに浸っていると今度は、その時感じた心の動きが蘇ってくる。それらのほとんどは、幸せな楽しいものではない。嫉妬や屈辱、求めるのに得られない寂しさ、そんなものだ。若いころは欲望に満ち溢れていたので苦しみを感じた事がいっぱいあった。なのに思い出の絵は、幾つかの出来事しかつれてこない。辛かった事の大部分は、私の記憶から消えている。私は忘れるという恩寵に浴している。
ある日、金色に近い毛の色をした猫が塀の上で丸くなって寝ているのを見た。その瞬間心の扉が開き、17年飼った猫のことを思い出した。猫はこの金色の猫のようにいつも丸くなって眠っていた。思い出の猫をしばらく眺めていたら、突然、猫が死ぬ時に苦しんだことを思い出した。胸がつまり、私は急いで記憶の扉を閉めた。
寒い日が続くと、また死んだ愛猫に会いたくなった。しかし、どうまぶたを閉じても、可愛いあの猫が思い出せない。あの時、記憶の扉を開けたのはあの金色の猫だ。金色の猫に会わねばならない。風の吹く外に出た。何が過去の扉を開けるのかは、まったくわからない。扉はふっと、何気なく開く。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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