2006年04月21日
山高天文部 伊能忠敬の測量機を復元
完成近づき期待ふくらむ
県立山口高校天文部(寺田志織部長、6人)が、伊能忠敬が日本地図の製作に使ったとされる江戸時代の天文用測定器「象限儀」の復元に取り組んでいる。半年以上にも及んだ製作活動は、いよいよ大詰めの段階。今年の文化祭までには実際の観測も行い、性能を調べた上で披露したいと張り切っている。
象限儀は、今から200年ほど前の江戸時代中期に、日本で初めて実測による正確な日本地図を製作した伊能忠敬が用いた測量機の一つ。扇形の目盛板に望遠鏡を取り付けた装置で、天体(北極星)が地平線から何度の高さに見えるかを測り、観測地点の緯度を決めていた。目盛板には副尺が付いており、30秒(1度の120分の1)の角度も読み取ることができる。
同部は昨年の夏から、文化祭のテーマ「和」にちなんだ制作作品として披露しようと、象限儀の復元に挑戦。現物を見たことはなかったが、本やインターネットで調べたものを参考に手探りながらも望遠鏡を取り付ける木製台までを作り上げ、昨年の文化祭で発表した。3年生が引退したその後も、部員たちは完成を目指して作業を続行。一番の難所である望遠鏡の製作に取りかかった。
まずは構造を知ろうと、10月に大阪市立科学館へ出かけて精巧なレプリカを見学。ガラスケース入りのため細かい構造などは分からなかったが、象限儀を実際に見たことでやる気は倍増。県立山口図書館で100年以上前に書かれた文献を探し当て、2カ月にわたる解読作業を行った。12月には、顧問の古本宏教諭が千葉県佐原市にある伊能忠敬記念館を訪れ、複製品を視察。測定の方法を知ったことで、望遠鏡に使われるレンズの種類を探し当てる大きなヒントを得た。
資料から分かった当時の望遠鏡は、接眼部分に3枚ものレンズを使っており、対物レンズと合わせると計4枚のレンズを使用。現在のものとは全く異なる構造のため、最もふさわしいレンズを選定することが最大の難関だった。さまざまな種類のレンズを一枚一枚実験機に据えては焦点距離を合わせていくという、地道な方法を取らざるを得なかったが、先月になってようやく選定に成功。レンズの種類と位置関係をつかんだことで、望遠鏡製作は大きく前進した。あとは四角い筒を作り、レンズをうまく固定できればとりあえずの完成だ。
「古い文献の解読や望遠鏡の一からの組み立てなど初めての経験ばかりで大変だったが、その分、さまざまな面で知識を深められた。天体観測をしても、レンズと焦点距離の関係を考えるなど、今までとは違った視点も身についた。一刻も早く完成させて観測をしてみたい」と寺田部長。古本教諭は「自発的に始まった象限儀の復元作業が着々と進んでいることをうれしく思う。目標に向かう子どもたちはとても頼もしい」と部員たちを温かく見守っている。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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