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2006年05月10日

写真

 十年ぶりに部屋の天袋を掃除したら、奥の方からダンボールの箱が出てきた。ゆっくりと引っ張り出してみると、箱は朽ちていてポロポロと屑が散り、アララ、と思うまもなく底が抜けた。中から出てきたのは古い写真だった。
 しばらく懐かしく見ていたが、私が死んだらこれらはゴミとなる、十年も必要なかったのだから全部捨てよう、そう思いゴミ袋の中に入れていたら、親友朋子さんの高校時代の写真が目に当たった。これが男子高校生と一緒に写っているのだ。見覚えがある。この広い額の男性はJ君だ。J君の立派な額を朋子さんは「若ハゲではないか」と心配していた。朋子さんは半袖の白いブラウスと紺の襞スカート、J君も白の半袖カッターと黒のスボン。写真の裏に“昭和三十七年九月、校舎の横で二人の写真です。美人に撮れているでしょ”と朋子さんの字で記してある。おかしくって、しばらく笑った。それから、すぐに手紙を書いた。「朋子様、押し入れを整理していたら、あなたとJ君が密かに校舎の横で撮った写真が出てきました。ご入用でしたら送ります」
 私は思い出した。この写真が朋子さんのお母さんに見つかって、彼女はひどく怒られた。私はお母さんに「朋子に虫がつきました。どうしたらいいでしょう」と相談を受けた。そのお母さんも鬼籍に入って十年。写真が押し入れで眠り続けていた年月だ。朋子さんからは要るとも要らないとも返事がない。思い出に浸っているのかもしれない。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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