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2006年06月04日

札の辻・21

 山口の町は、一夜で過ぎてゆくのは惜しい町だ、「小京都」と、中世末期にいわれたこの町は、京都がそうであるように、新緑の雨によく適っている--。
 これは司馬遼太郎の著作「街道をゆく1長州路」の「瑠璃光寺など」の書き出しである。このあと雨の中を五重塔までの文章がつづく。
 「ごっぽう、降りまする」と車が動き出したとき五十年配の運転手がいった。途中の町並が暗く旧街道のおもむきが濃く残っている。
 司馬遼太郎が書くように山口の町は新緑の雨がよく合うという風情だが、ことしの5月はその雨が多く汗ばむ五月晴れが少なかった。そしてすでに6月で入梅が近い。
 このところの天候では青葉寒む、梅雨寒むといった季語が合うように肌寒い日もある。
 池波正太郎の短編小説に「梅雨の湯豆腐」というのがあった。
 殺し屋の彦次郎は「豆腐に油揚げを細かく切って入れた小鍋で酒を呑みはじめた。梅雨の冷えに湯豆腐はことにうまい」という一節だ。
 江戸時代、1782(天明2)年に刊行された「豆腐百珍」は、豆腐を使った料理百品を並べたもので、煮る、焼く、揚げる、生など多彩だが現代風の湯豆腐は無く、高津湯豆腐が6番目に出るが、これは温めた豆腐に醤油とミリンと葛のあんかけで、暑い夏に、寒い冬にも良いとある。
 「湯豆腐でよし、ひや奴でよいが、豆腐の原形を失うほどの料理は好みでない。豆腐は肌理こまかい女性の肌を連想し僧房も艶かしくなる」とは作家で僧侶だった今東光だ。
         (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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