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2007年08月18日

札の辻・21

 8月5日、山口野田神社境内の能楽堂で行われた能狂言を観た。
 中世室町時代に田楽、猿楽から能狂言が成立した頃、本舞台に廊下風の橋掛かりをつけた能舞台が生まれた。野田の能舞台も破風の屋根をもつ本格的なもので、昏れるに遅い夕空にウロコ雲がひろがり、鴻ノ峯のシルエットが濃くなる頃から、まず舞囃子、仕舞と乾いたような夏の音を打ちつづける鼓で開演した。
 地元協力者の顔ぶれによる奉仕・介添役で火入れ式が行われ、勢いよく薪の炎が燃えたつ頃から舞台も観客も宵闇に包まれてゆく。
 狂言「鐘の音」は、 金と鐘を勘違いした太郎冠者と主人による掛合いの所作事がおもしろく、鎌倉各寺の鐘の音色を伝える野村萬斎の若い声量と芸域の充実さを今更に識る思いであった。
 最後の能「殺生石・女体」は下野の国(栃木県)は那須野原にあったという伝説の殺生石と称する大石にまつわる室町期の謠曲物語で、古くから能の演目として知られている。能では狐など動物の化身は男体とされるが、このたびは女体で上演された。
 ところで、無表情のことをよく能面のごとくと表現するが、殺生石の女体面を見る限り、舞台光と薪の炎と、そして鼓の高低音につれて能面にゆたかな表情を見た。動と静、光と音のつくり出す幽玄の世界に魅せられた一夜で、終演の夜空には星影もなく鼓の余韻だけが残った。              (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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