サンデー山口

　「好きな時間に働けて、休みたい時は休めて上下関係もない。自分の趣味を生かせる最高の仕事ですよ」―。生き生きとこう話すのは、８年前に（社）山口市シルバー人材センター（以下シルバー）に登録し、今では１２６人いる剪定班の統括を務める中村省吾さん（６５）。まじめで丁寧な仕事が評判を呼び、公共機関や企業などからの依頼も増えている。歳をとっても社会とかかわりを持ち続け、自分なりの役割を持つ。こんな“生きがい”を見つけたシルバーの元気な会員たちを取材した。

　中村さんの前職は車の販売・営業。ノルマや上下関係でストレスがたまることも多かったという。５４歳で退職し、以前から剪定が好きだったことから、その後産業技術学校に入り、３年間造園屋で技術を磨いてからシルバーに登録した。現在は、年間を通して、一般家庭や公共施設などの植木の剪定に汗を流す毎日だ。中村さんは「ここに入り、もともと自衛官や警察官、会社員、経営者だった人などいろんな方と仲良くなれた。ノルマもなく、お天道様の下で自分のペースで楽しく働け、お客さんに喜んでもらえるなんて最高ですよ。元気なうちはずっと続けたい」と言う。また、入会するまでシルバーに対して“草取りや清掃”のイメージしかなかったというパソコン班の舩木由美子さん（６４）は、「実際入ってみると、皆さんがいろんな分野で生き生きと活躍されていて、本当にすごい集団だと驚かされた。ネットワークも広がり、今は仕事を辞めてからの一番の出会いがシルバーだと思っている。家に居ても外に出ても１日は２４時間。だったら生きている間はいろんな人に出会いたいですね」と話す。
　昨年８月上竪小路にオープンした同センターの子育て支援施設「八坂の家」で、おたすけ隊として活躍している宮本睦江さん（６７）も元気な会員さんの一人。今は保育士の資格を生かし、子育て中の母親の相談相手や子守りをしながら楽しく過ごしている。「入会したころは思いもしなかったが、シルバーに入ってヘルパー２級の資格を取り、それが今では１０１歳になった母の世話をするのに役立っている。大好きな子どもともふれ合えるし、いろんな意味で会員になって良かった」と笑顔で話す。
　現在、同センターには大きく分けて次の７職種がある。【１】技術群（パソコン指導・教育指導など）【２】技能群（大工・裁縫など）【３】事務整理群（一般事務・宛名書きなど）【４】管理群（駐車場駐輪場・施設管理など）【５】折衝外交群（販売・配達など）【６】一般作業群（除草・清掃作業など）【７】サービス群（高齢者や子どもの世話・犬の散歩など）だ。家庭内での困りごとにすぐ対応する「すぐいくゾウ」や学童預かり「なかよし」、多世代交流をする親子サロン「きてみーね」など、独自の事業も積極的に展開。約１６００人の会員が、仕事を通じて生きがい、過去の職業経験、技能を社会に還元することへ喜びを感じて働いている。また、政府が掲げる「２０１０年度までに会員数を全国で１００万人にする」という目標に向け、会員自ら企画提案するなど、知恵を出し合っているという。
　事務局次長の村田徹さんは「今後、団塊の世代がシルバー世代になることから、高齢者の多様な就業ニーズに応えられるような組織作りが必要となる。地域社会に密着した事業展開を目指し、これからも会員の生きがいづくりや健康維持といったさまざまな希望に応えていきたい」と話している。