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2008年04月19日

札の辻・21

 先週末に所用で上京したが二日目が雨になった。皇居の濠端も丸の内もサクラ並木は葉ザクラとなっており、冷たい雨がこぼれ残りの花びらを舗道に落としていた。
 予定を変更し神田神保町の古書店街を漁って歩くうちに、ある店の「やきもの随想」や「陶芸美術論」の並んだ書架で、一瞬、眼に入った表紙の活字があった。「窯の詩」である。
 もう20年以上も前になるのだが、防府市大道の長沢湖畔に登り窯を持つ陶芸家原田隆峰氏の書いた小説なのだ。
 本は氏から恵贈を受けているので求めなかったが、旅先で久しぶりの旧友に出会った如き気分になり、しばらくはその場に佇む。
 陶芸家と小説-といえば県無形文化財指定保持者の大和保男氏にも「激浪の遥かに」という萩焼異伝小説がある。
 陶芸家の創作意欲は、時に視野の角度を拡大し文学にも炎を転じて窯変することもあるらしい。
 この日の夜は、行く春の雨と懐旧の情にひかれ、若い頃によく飲みに出向いた三省堂書店横の露路にある薩摩酒亭「兵六」へ行く。
 主人はすでに三代目の若主人となっていたが、天井も壁も古色ゆたかに杉丸太を2本横にしただけの腰掛けもツヤが出て光っていた。
 桜島大根とモツの煮込みで芋焼酎を飲んでいると、詩人田村隆一や山之口獏など、あの頃の常連の顔が浮かぶ春宵の思い出酒となった。
        (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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