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2008年08月23日

札の辻・21

 風化する終戦記念日-という声のあるなか私には忘れられぬ曲がある。
 「海ゆかば」だ。海ゆかばは万葉集巻十八にある大伴家持の歌「海ゆかば水漬く屍」を、1937(昭和12)年に東京音楽学校(現東京芸大)教授の信時潔によって作曲された。
 だがこの曲は戦意向揚とは逆に、戦局の悪化と共に鎮魂曲的に演奏されることが多くなった。
 文化評論家新保祐司氏は「海ゆかばという名曲は、バッハと万葉集が信時潔のもつ古武士的な精神によって奇蹟的に結ばれたもので、まさに昭和史における苦難に満ちた時代の国のささやきであった」と述べている。
 私にはまた信時潔に格別な感慨がある。
 それは母校旧制徳山中学(現徳山高校)の校歌が「春が来た」や「故郷」で知られる高野辰之の作詩で、作曲は信時潔であることだ。徳高百年史に-信時潔は東京音楽学校教授、祖父、父、と共にクリスチャン。生涯イガ栗頭で野人的風貌を通し「海ゆかば」の作曲もした-と解説。
 思い出がある。
 1945(昭和20)年8月15日正午。私は呉海軍通信隊暗号要員として終戦の詔勅を聞いたあと、本部に戻る途中の防火水槽に2匹のアメンボを見つけ、長い6本の足で巧みに水面を滑走する姿に見とれた。遠く「海ゆかば」の曲が聞こえる。
 思考の停止した終戦のたまゆらに、アメンボは小さな命の影を無心に躍らせていた。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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