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2008年11月01日

札の辻・21

 開催中の「美と痛み・大和保男の陶と中原中也」企画展を中也記念館に見る。
 出展作のうち中国史伝の美女を組み込む陶筥も力作だが、峡谷の大自然を大胆に表現した山稜陶筥に圧倒された。そこには明治末期に旧制山口高商の英人教授ガンドレット氏によって海外にまで紹介され、荒い岩肌と清冽な急流が激り中也の詩った長門峡が力強く陶映されているからだ。
 保男氏は中也の詩に自己のもつ感性を絡める造形創出のため、ここ1年詩と陶の空間に燃えたと話す。私は長門峡竜宮淵の渦を見るように保男陶芸の道のりをふり返り、中也の「詩人ランボー論」に想いが及ぶ。
 中也は言った。
-ランボーの詩には陽の光があり、海の色や草の色や石や泥の肌、そして風の匂いがある。文学論的な意匠はことごとく剥ぎとってしまった-と。
 中也の言葉から詩を陶に置き換えると、土に向かう保男像が重なってくる。彼は若い時からピカソに傾注した。その共感から生まれる独創的な資質で陶域に立ち情感に埋没することはなかった。平面的なデッサンを立体に象徴させ、独自の視点で遠近を具象化する技法ものぞかせている。
 その陶風には格調のある中也の詩にも見るはにかみさえ漂う。
 渓谷美の長門峡が詩情的に迫ってくる釉調には海の水平線がもつひろがりすら感じ、詩作も陶芸も叙情につながる脈動なのだと思った。 (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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