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2009年05月09日

札の辻・21

 麦秋を迎えてムギの穂波の上を薫風が吹き抜けてゆく。
 ムギと日本人のつきあいは古い。熊本や静岡の縄文時代後期の遺跡でオオムギが出土し、コムギは山口・福岡の弥生時代前期の遺跡からも見つかっている。また同じく西南アジア原産のカラスムギは長崎で発掘された。いずれもアジア大陸からの伝来種である。
 畑作の栽培植物で副食用だったムギは、農民が年貢としてコメを取り立てられた室町・江戸時代になると自給用にムギ作がひろがり水田のコメの裏作となった。
 麦秋=ムギの秋とは春夏秋冬の季節に関係なく収穫の時期をさす農事用語で俳句の季語ともなる。ムギ畑の風景が季節感の生まれる原点となっており、小津安二郎監督の映画に「麦秋」があった。原節子の容姿がいまも目に鮮やかである。
 数年前、文化講演で来山の作家中野孝次氏に山口・徳山と2日間随行をしたことがある。
 氏は戦中派で切迫する死の予感といのちへの渇望のはざまにいら立つ熊本五高時代を「麦熟るる日に」の自伝小説に書き平林たい子賞を得る。
 強制的に死をもたらそうとする戦争という現実に抵抗しながら、精神の自立を願い知性にめざめてゆく青春期を、清冽な文体で表現した作品は印象的だった。  (鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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