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2009年07月18日

札の辻・21

 山口大学経済学部同窓会東京支部主催の総会で郷土出身作家高樹のぶ子の講演を聴く。
 1946年生まれとは思えぬ若々しさを感じさせる彼女は、生まれ故郷防府での生い立ちから話す。それは著作「マイマイ新子」の書き出しと同じで-草や雑木で覆われた小川が北側の山から流れ田んぼの脇でほぼ直角に折れ曲がって、竹やぶに当たり再び直角に向きをかえる。祖父は川というものは直角に曲がることはない、これは大昔に造られた川だと説いたと、彼女の半生をふるさとの自然に重ねて祖父父母友人と各々の戦後の生きざまを語り、子供の頃に父の勤務で山口の一ノ坂川近くや湯田に住んだこともあって、一ノ坂川の川音とサビエル記念聖堂の鐘のひびきや、公園下の大学校舎など忘れ得ぬ山口の風景もなつかしむ。そして一般的に戦後の国民生活はきびしかったが、季節の手ざわりや家族のつながりで、子供は子供らしく成長できる環境は豊かであった。あれから50年、日本は高度成長を遂げたが何かと多くを失ったことか-と少女期の思い出が体感となって流れていると話した。
 終戦直後に生まれた彼女と同世代の中上健次にも故郷熊野の風土を背景に家族関係を素材にした作品があり、二人の内向性は同時代をとらえる触手的存在だと思う。
 芥川賞受賞作「光抱く友よ」に見る前向きの探求姿勢は、ひたすら今も星に向かっている。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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