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2010年08月28日

札の辻・21

 台風4号が日本海を抜けていった旧盆すぎから、ツクツクボウシの声も聞かれるようになった。古くから人が秋を知覚するのは風の音とされ、
 淋しさに飯を食う
 なり秋の風  一茶
この句は現代にも通じる日本人的感性だという。
 山口盆地に残暑のきびしさが居残っていても、徳地、徳佐の山間部にひと足早くコスモスが咲きススキが穂をひらく。ビルのサッシ窓は風の音をさえぎるが、日本家屋の障子には秋らしい音が伝わって、晩夏から初秋への季節感がひそやかに移ってゆく。
 その晩夏の道場門前に開店したばかりの北国の味店へ行った。
 青森、秋田、岩手、山形、福島と東北5県のお国ぶりの品々を求めながら、やはり秋田のいぶりがっこは忘れ難い郷愁の味である。
 秋田では漬物をガッコと呼ぶ。いぶしガッコ、いぶり漬は雪国の冬の囲炉裏端での生活の知恵から生まれたタクアンの燻製なのだ。
 この漬物を味わうとき秋田出身の作家石川達三の第一回芥川賞受賞作の「蒼氓」がよみがえってくる。
 秋田育ちの貧しい農民の娘が母と弟のために、自らの恋をあきらめブラジル移民へとたどる道程を書いたものでガッコのくらしが滲む。
 東北の季節はかけ足でゆく。その自然のリズムに順応した伝承的食文化の味覚がこれから山口の町角にも匂う。(鱧)


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)札の辻
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