サンデー山口

　

美術館では、コレクション展「雲谷派画題辞典故事人物」が今月30日まで開催されている。
　解説を読むと、中国では琴を弾く、囲碁を打つ、書をかく、画を描くことが有徳の教養人のたしなむべき技芸とされたようだ。自分はそんな技芸を身につける柄ではないが、老いた自分がこんな山中の隠れ家で気の合う友人と談笑しながら琴ならぬＣＤで音楽を聞き、かまどでお湯を沸かしてコーヒーを飲み、本を読んだりできたら楽しいだろうな、と思う。傍らには鶴ならぬ犬がうずくまり、外に出ると高く遠い山の頂が眺められる。ひょっとしたら、静かに書を練習してみようかなんて気になるかもしれないな。
　かつて、こんなことを思いながら絵を見たことがあったかしら。なんだか、モノを見るときの心の傾き方が最近変わってきたような気がする。そんな自分の気持ちに引きつけつつ絵を眺めているのも楽しい。

県立美術館学芸専門監　斎藤　郁夫