アクセスカウンタ
QRコード
QRCODE
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 70人

店長情報 トップページ
店長情報

2011年04月09日

すべて色褪せて

 朝起きて窓を開けると、卵色の朝日に照らされた山々が見える。そこは、薄紅色の山桜と白い辛夷の花盛りで、とても華やか。川べりや公園の近くを歩くと、全部桜色。こんなに桜の樹があったのかと思われるほどいっぺんに桜の花ばかりになっている。家々の庭からは黄や白の水仙が香ってくる。私の苦手の寒い冬が明け春が来たのだ。
 いつもなら、ルンルン気分になり、友人を誘って花見なんぞにでかける計画をたて、どこの花見弁当がおいしいか、などと姦しいのだが、今年はそういう気分になれない。東日本大震災が発生した日から、すべてのことが色褪せてしまった。
 津波が地を走り、ビルに襲いかかる。車を倒し、人や家を飲み込む。原発周囲の全身白い防護服の人達。瓦礫の間に並べられた遺体、海に浮かぶ流された屋根、うなだれて歩く怪我をした犬…。それらの前には、春もない。桜もない。春が来たことになんの意味も持てない。花々の精気が今はうとましい。
 東京在住の同級生Aさんに「水を送りましょうか」と電話した。「いいわよ。大人は飲んでも大丈夫らしいから」と彼女は言った。Aさんは、昨年胃癌の手術をしたばかりなのだ。
 被災地の復興への目処がたたなければどこにも春はこない。


同じカテゴリー(おんなの目)の記事
 見事なびらん (2019-07-24 00:00)
 主題 (2019-07-17 00:00)
 バスが来たら (2019-07-10 00:00)
 居るよ、居る、居る。 (2019-07-03 00:00)
 きんと雲 (2019-06-29 00:00)
 本の海に潜って (2019-06-19 00:00)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。