サンデー山口

早期発見、早期治療に向けて
　日本における死因の第1位は「がん」。テレビや新聞などのメディアから、誰もが見聞きし認知している事実だ。にもかかわらず、国内のがん検診の受診率は、ほかの先進国に比べて目立って低く、中でも山口県の受診率は、ほとんどのがんで全国平均を下回っている。まだまだ早期発見、早期治療への意識が低く、医療機関では「『他人ごと』とは考えずに、まずは定期検診を受けて欲しい」と呼びかけている。

男性　食生活の欧米化が影響　前立腺がんが増加中
　75（昭50）年時点での罹患者は全国で約2500人。日本では発症例の少ないがんだったが、急激な増加が続き、06（平18）年には約2万3千人にまで膨れあがった。動物性脂肪の摂取量が増えると発症リスクが高まることから、食生活の欧米化が影響していると考えられており、増加速度は00（平12）年を基準に考えると、20（平32）年には2・8倍に達する計算だ。男性のがん罹患者の中に占める割合は、05（平17）年では11％（4位）だが、20年ごろには20％（2位相当）に迫るものとされている。
　高齢者に多く見られるが、50歳代での発症も増えている。早期は無症状なため、定期検診の重要度が特に高いがんでもある。

地域連携、市による検診もスタート

　市医師会、吉南医師会、市泌尿器科医会による「山口市前立腺がん検診地域医療連携パス」の運用が昨年3月に始まった。これは、泌尿器科専門医と一般開業医との間で、紹介のやりとりをスムーズにさせるための取り組み。これまでは、検査頻度や生検（異常値が発見された場合の、専門医による精査）が必要か否かの判断数値が病院ごとに異なっていたが、これらもすべて統一された。各医療施設でデータを共有するための「管理手帳」もある。
　さらに、昨年9月から市による前立腺がん検診も始まり、千円（70歳以上の人はさらに減額される場合もある）の自己負担で受診できるようになった。対象となるのは満50歳以上の人。11（平23）年度の検診はすでに12月で終了しているが、12（平24）年度も6月1日から12月20日まで実施される予定だ。

女性　20～30歳代に急増　子宮頸がん

　子宮頸がんは発がん性ヒトパピローマウイルス（ＨＰＶ）の感染が原因で、子宮の入り口に発症する。ここ20年で20～30歳代の罹患者、死亡率とも急激に増加。女性のがん罹患者の中に占める割合は、05（平17）年の統計では子宮頸がんは2％程度と、乳がんの約15％（1位）に比べて少ないが、40歳未満だけに限ると数値は一変。乳がんの約20％に対し、40％を超えている。
　ＨＰＶの感染原因は性交渉で、約8割の女性が一生に一度は感染するほど、身近に存在するウイルスだ。若い世代に広がっている原因として、初交年齢の低化が一因となっており、異常を感じても“話しづらさ”から発見が遅れるという事例も多い。

全国でも最低ランク　受診率の改善に向けて


▲乳がん子宮頸がん検診手帳

　前立腺がん同様、初期状態では自覚症状がほとんどないため、早期発見には2年に1回の定期検診が非常に有効だ。発見が早ければ100％治癒でき、子宮を残すことも可能だが、県内の受診率は極めて低く、全国ワーストを記録した年もある。
　現在、検診の受診率アップを促すために、同じく女性特有の乳がんとともに「乳がん検診・子宮頸がん検診無料クーポン券」が、市から配布されている。対象者は、子宮頸がんが20、25、30、35、40歳、乳がんは40、45、50、55、60歳。それぞれのがんについて詳しく説明された検診手帳も一緒に配られている。

定期検診の継続受診を

　大腸、胃、肺がんなども、検診を定期的に受けていれば、早期発見につながる。日本では、2人に1人ががんを発症し、さらにそのうち3人に1人が命を奪われている計算となり、これは世界でも最悪のレベル。費用が通常の2割程度で済む、市のがん検診を活用するのもおすすめだ。