サンデー山口

　感情の神経が、皮膚の表面近くに出てきている。
　どこにでもありそうな単純な人情話にホロリとしてしまう。新聞記事をなんでもすぐに信用してしまう。テレビコマーシャルの毛生えローションを買いそうになる。努力なしに英語がわかるようになる気がする。浅くしか物事を考えないので、これなら簡単に、俺々詐欺にひっかかりそうだ。「あの、俺だけど、会社の金を使い込んでしまった。今、監査が入ってね、すぐ弁償すれば会社に分からないんだ。金を振り込んでくれないか」。驚いて金を振り込むかもしれない。手持ちがあればのことだけど。使い込んで分からなく処理できる訳がない、ということに気づかない。
　こんなハガキが友人から届いた。
“川上未映子（芥川賞受賞作家）を支えているものは学識。側頭葉は相当なもの。彼女より長く生きているあなたの脳が負けていてはいけません。どうぞ勉強してください”。
　川上氏の作品は好きだが、何をどう勉強していいのか、なんにも分からない。考えずにすぐに降参する。
　歴代の芥川賞作家数人に、書くことで一番必要なことは？と聞いたら、全員、努力、と答えたテレビを見た。嘘つきだよね。才能、と本人
の口から言えないと思うけど、ここは私は騙されない。