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2012年03月14日

 Aさんと昼食に回転寿司
に行った。私は鯖などの光り物が好きで、彼女は白身の魚が好き。それぞれ黙々と流れる皿を引き寄せて食べていると、板前さんが「今日は鰻が良くでるな」と言うのが聞こえた。鰻? 私はAさんと顔を見合わせた。横を見ると若い男性二人が鰻を美味しそうに食べている。
 「アレよ、あの詩を思い出さない」と私。「嵯峨潤三さんの詩集“水中の空”の“春を呼ぶ”でしょ」と彼女。「覚えてる?」「さわりのところだけね」とAさんは小さな声で朗誦した。
 その生態が謎のため/ユピテルの子どもといわれた/柳の葉のような無色の幼魚たち/遥か南の/水深二千メートルの無明の海から/暖かい海流とともに遡ってきた/謎めいた幼魚たち/ひとはそれを容赦なく/捕獲し換金しようとする/ひととは貪欲な獣よ
 「鰻下さい」。Aさんが注文した。「貪欲な獣よ!」と私は彼女に向かって言った。Aさんは続けた。
 風花のさきの深淵/春を呼ぶ風景の/春を呼ぶ幼魚が/懐かしい磯のかおりを引き寄せる/すると わたしのなかで膠着していた/わだかまりのようなものが消えていた/わたしはそこから踵を返した
 鰻は美味だった。春は近い。新しい季節が始まる。獣達は野に出てくる。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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