サンデー山口

　コレクション展「東松照明と戦後日本写真」展が今月29日まで開かれている。
　7人の写真家が撮影した場所は東京、東北、九州、沖縄など。撮影時期は1946年から73年まで。ちょうどこの時期の真ん中あたりに生まれ育った私は、写真を見ていて、「これは知ってる！」というものをたくさん見つけた。
　たとえば、厚手のゴザに横たわった感触、土間のひんやりと湿った黒い土、ねじ巻き時計のくぐもった「ボンボン」という音、絣の着物の手触り、戦死した叔父さんの写真、仏間の重く淀んだ空気。幼い頃に田舎に行くたびに感じていた身体的な記憶が生々しく蘇り、写真をくわしく観察しようとする視線の行き先が、ふいに見失われたような気がした。
　昔の写真を見ていると、写された「その時のそこ」が「今のここ」にのしかかってくるように感じることがある。写真が強い喚起力をもっているがゆえのことだと思うし、写真の魅力もそこにあると思う。
県立美術館副館長　斎藤　郁夫