2013年12月18日
赤い実のある木
近頃、早朝近所を散歩していると、団地の入口に赤い実のついた木があり、そこに沢山の雀がいるのだ。日の出間際にそこを通ると、雀がうるさい。本当にあれはピーチク、パーチクと小音節を繰り返し、高く忙しなく鳴く。
木の側には、アパートがあり、二階の右端の部屋から手を伸ばせば赤い木の実に触れるほど近い。ある日、六時頃に通るといつもは暗いその部屋に灯りがついていた。窓が開き、若い短髪の男が顔を出し、優しい声音で木に向かって、いや、雀になにか言っている。よくは聞こえなかったが、多分、こう言ったのだ。
―静まれ、雀。まだ、朝の6時じゃないか。僕はまだ眠いんだ。
すぐに窓は閉まり灯りも消えたが、雀は静まらない。静まらないどころか益々やかましい。私は窓を見上げ、彼の言いたい言葉を繋げた。
―僕は夜勤で夜中の2時に帰ってきたんだぞ。その頃、君達は赤い実の木の中で眠っていたじゃないか。今、出勤の準備中かな。君達は正社員なんだね。朝、出勤して夕方早くに帰ってこられるんだな。羨ましい。僕は勤務して十年になるけれどまだ準社員なんだ。準社員って言葉、雀は知っているか? 正社員になったら結婚しようと思っている。 それにしても、雀、もう少し静かにしてくれないか。僕は眠たいよ。
木の側には、アパートがあり、二階の右端の部屋から手を伸ばせば赤い木の実に触れるほど近い。ある日、六時頃に通るといつもは暗いその部屋に灯りがついていた。窓が開き、若い短髪の男が顔を出し、優しい声音で木に向かって、いや、雀になにか言っている。よくは聞こえなかったが、多分、こう言ったのだ。
―静まれ、雀。まだ、朝の6時じゃないか。僕はまだ眠いんだ。
すぐに窓は閉まり灯りも消えたが、雀は静まらない。静まらないどころか益々やかましい。私は窓を見上げ、彼の言いたい言葉を繋げた。
―僕は夜勤で夜中の2時に帰ってきたんだぞ。その頃、君達は赤い実の木の中で眠っていたじゃないか。今、出勤の準備中かな。君達は正社員なんだね。朝、出勤して夕方早くに帰ってこられるんだな。羨ましい。僕は勤務して十年になるけれどまだ準社員なんだ。準社員って言葉、雀は知っているか? 正社員になったら結婚しようと思っている。 それにしても、雀、もう少し静かにしてくれないか。僕は眠たいよ。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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