サンデー山口

　私は、変節の天才である。いや、天才ではなく、ただの裏切り者。少し柔らかくいえば節操がないということだ。
　友達と“うどん”を食べようと、ファミリーレストランに入り、メニューを見ていて変節し、マカロニグラタンを食べる。友人が「うどんが食べたいって言ったのに、なによ」と声を荒げる。
　ひとつ選ぶということは、他を捨てるということである。
　メニューを見る前は、うどんしか頭になかった。マカロニグラタンという文字を見たとたん、あのチーズのかかったホワイトソースの味が私に鰹出汁のうどんを忘れさせた。うどんを捨てる…。うどんと友人を裏切ったのである。
　一分前までは、うどんを食べたかったのは、真実である。その時は、他の料理は思い浮かばなかった。レストランでメニューを見て、選択肢が増えたから乗り換えたのだ。自分の食べたい物がなにであったか、比較することでわかったのだ。うどんではなく、穴のあいたマカロニなのだ。真実がわかったのに、ここで前言をひるがえすことを躊躇してはならない。知ることによって、本質が見えてくる。今の私の真実の心は、マカロニグラタンなのだ。
　いや…ステーキもいいな。まだ注文を替えるの間に合うかな？