サンデー山口

▲種子植物界最小の果実

　初春の寿ぎを申し上げます。新春にあたり縁起を担いで植物界の世界一、ただし今回は「世界最小の果実（実）」を紹介します。その植物は「ラン類」です。一般にラン類は、種子植物類の中で最も小さく軽い果実をならせるといわれています。写真は、私たちに最も身近な野生のランの一つであるネジバナ（モジズリ）の果実です。その大きさは、おおよそ0.65ミリ×0.15ミリ程で、重さはなんと10万分の数グラムしかないといわれています。
　なぜラン類はこんなに小さい果実になったのでしょうか。理由は子孫繁栄のためです。植物はタネを遠くに飛ばすことで分布を拡大しますが、風に乗って運ばれる方法は、綿毛や翼などの形だけではありません。その大きさを極端に小さくかつ軽くすることで、遠くに運ばれることに成功したグループがラン類なのです。少しの風に埃のように舞い上がり遠くへ運ばれるのです。中央のタネの周りに翼があるのも特徴です。
県立山口博物館 学芸員 嶋村　拓実