サンデー山口

▲晋作とマサが暮らした草庵跡（萩市椿東）

（2月25日付・松前了嗣さん寄稿の続き）

困った息子

　豊田翁のはからいで、晋作は、無事、父との面会を果たしました。
　しかし、来客の多い高杉家に、彼を置いておくのは体裁が悪いという理由で、翌日からは土蔵の2階に追いやられ、3度の食事も妻が運び、終日、籠城させられることになりました。
　この日、友人・堀真五郎が訪ねて来ましたが、面会は断られ、彼は空しく高杉家を後にしたのでした。

隠棲生活

　「あいつをずーっとここに置いちょくのものう…。どっかええ所はないかのう」。父は出入りの者に、息子の住む家を探させることにしました。
　そのうち松本村（現・萩市椿東）に小さな草庵が見つかりました。こうして、晋作は妻・マサとふたり、隠棲生活を送ることになりました。
　この地は人里から離れた実に寂しい場所でした。ですから、晋作が大声で詩を吟じても全く差し障りはありませんでした。彼は毎日、早朝に目覚め、井戸端で顔を洗い、朝食の前に、近くにある師・吉田松陰の墓に手を合わせるのが日課でした。日中は謹慎し、一歩も外出することはありませんでした。
（続く。次回は11日付に掲載します）