サンデー山口

▲遊撃軍総督・来島又兵衛（絵・苑場凌）

（5月27日付・松前了嗣さん寄稿の続き）

妙案

　大専坊（防府市）に到着した晋作は、早速、来島の説得にあたりますがなかなか同意を得ません。
　そして、数日間、考えに考え抜いた彼の頭の中に、妙案が浮かんできました。　　
　その案とは、京都で失地回復を図ろうと奔走中の久坂玄瑞や桂小五郎（木戸孝允）のもとを晋作が訪ね、進発すべきか否かの判断を仰ぐ。その判断に来島も従うというものでした。
　この提案に来島も同意。晋作はただちに富海港（防府市）へと走り、山田市之允（顕義）を伴い、上方行きの船に飛び乗るのでした。

脱藩

　2月2日、大坂（現・大阪市）に着いた晋作は、京阪の間を往復。久坂らに意見を聞き、最終的に進発中止の結論を出します。
　一方、山口では、晋作の行動に対し非難の声が上がっていました。
　「おい、高杉が仕事を放たって、上方に脱走したらしいど」
　「去年の8月頃にゃあ、奇兵隊を連れて大坂城に攻め込んじゃるとかいいよったくせに、役人になった途端、コロッと態度が変わりやがった」
　藩政府の許可なく上京した晋作は、周囲から誤解され、苦しい立場へと追い込まれることになったのです。
（続く。次回は10日付に掲載します）