サンデー山口

▲親友・井上馨（絵・苑場凌）

（1日付・松前了嗣さん寄稿の続き）

暇乞い

　「わしはいつ命を奪われてもおかしゅうない」
　その頃、晋作の親友・井上馨は、ひとり萩往還を歩いていました。
　イギリスから帰国し、開国論を唱え、命の危機にさらされていた彼は、萩に住む姉・常子と晋作に別れを告げようと、山口を発したのでした。
　彼は、萩に到着すると早速、姉に面会。その後、晋作の元を訪ねました。
　「山口の井上聞多であります。本日は暇乞いに参りました…」
　しかし、晋作は座敷牢につながれる謹慎の身。父・小忠太によって面会は断られます。
　そうするうちに、そこに晋作の妻・マサがやって来ました。すると…。
　「おお、用事を思い出した。わしはちょっと出かけて来る…」
　父は、マサに後を託し、外出したのでした。
　「井上さん、どうぞこちらへ…」
　こうして井上は、牢内に通されました。
　「晋作！　久しいのう」
　彼は、渡航中の苦労話、イギリスの実状、帰国して今日に至るまでの経過を語ります。
　晋作も、今日の境遇に至るまでの話や、獄中の様子などを語りました。
こうしてふたりは、開国論で同意。座敷牢に寝転がり、天井を見上げながら、死所を共にしようと誓い合うのでした。
（続く。次回は15日付に掲載します）