アクセスカウンタ
QRコード
QRCODE
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 69人

店長情報 トップページ
店長情報

2016年01月27日

歴史

 湯田温泉から早朝の福岡行きのバスに乗った。始発の客は3人だったけれど、2時間を過ぎた頃、Aバス停から最後に乗り込んだ乗客に目がいった。
「山田さん!」。私は大声を出していた。山田さんは、こちらを見て、「まあ」とびっくりした顔をした。近くの人達が何事かと一斉に私達を見た。
 私と彼女とは30年間ご近所だった。本の好きな彼女に沢山本を借りた。一緒に旅行にも行った。彼女は、母親の介護のために10年前に故郷に帰った。それ以来の再会、ひと昔経っている。
「お変わりない?」と私。
「いろいろあってね」と山田さん。
「いろいろを聞かせて、歴史を聞きたいわ」「歴史というほど大層なものじゃないけれどね」。
 山田さんは、身体障がい者になっていた。見た目は全く昔のままだが身体の奥深くに病があるという。赤い障がい者手帳を見せながら苦笑した。お互いに身辺の報告をした。
 10年間の歴史はそれぞれ10分で語り終えた。庶民の歴史は簡単なのである。もちろん、その行間に潜む心は顔を見て手を握れば忖度し合える。親愛の長い付き合いの歴史があるから無沙汰はすぐに越えられる。
 窓外には、葉を落とした木々が寒そうに並ぶ。厚いコートを着た人が行く。隣の席の山田さんの頬は紅色。重ねた手はぽっかぽか。


同じカテゴリー(おんなの目)の記事
 見事なびらん (2019-07-24 00:00)
 主題 (2019-07-17 00:00)
 バスが来たら (2019-07-10 00:00)
 居るよ、居る、居る。 (2019-07-03 00:00)
 きんと雲 (2019-06-29 00:00)
 本の海に潜って (2019-06-19 00:00)
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。