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2016年02月10日

「またね」1

 東京の郊外で療養生活を送っている友人がいる。彼女は90歳。山口で暮らしていたが、8年前腰を痛め生活に不自由が出てきたので、東京にいる娘の所に同居した。最初は娘に介助されながら美術館等に出かけ楽しんでいたが、3年前から立てなくなり老人ホームに入居し介護を受けている。
 今年に入り彼女から「会いたい」という電話が頻繁にかかるようになった。私の胸中は騒いだ。上京した。
 山口は雪が5センチばかり積もっている日だったが、新幹線は30分遅れで動いていた。広島辺りまで外は真っ白だったが、岡山に近付く頃にはもう雪はなく青空が広がっていた。富士山がくっきりと見えた。頂上から中指一本ほどしか白い雪はなかった。
 彼女は老人ホームの自分の部屋で髪をカットしてもらっていた。私を認めるとパッと顔が輝いた。
 真っ白の美しい髪の彼女と昔話をした。彼女の記憶は30年前のことと、10年前のことと、昨日のことと時間が混乱していた。戦争体験はほんの数日前のことであり、亡くなった友人達は皆生きている。私は相槌を打ちながら、一緒に時の流れの中を自由に行ったり来たりした。
 「夕食ですよ」と声がかかると彼女は私に手を振り嬉々として車イスで部屋を出て行った。私は「またね」と後ろ姿に手を振った。


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Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)おんなの目
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