サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
　新聞を広げたら、高齢の女性が避難場所の広い体育館の隅に坐っている写真が載っていた。白髪。背を丸め座布団の上に足を投げ出している。きっと膝が痛むのだろう。その女性の近くに小学校低学年くらいの女の子が坐っていたが、その子と同じ大きさの女性。そんな小さな女性の身体の中にどれほどの悲しみがつまっているのだろう、と思いながら、新聞紙の上から彼女の身体を撫でた。肩も腰も痛いだろう。身も心も疲れているだろう。胸は不安で一杯だろう。
　次の紙面には、土砂崩れの写真があった。美しい阿蘇が壊れている。今から新緑の一番阿蘇が映える時なのに。何万、何千、何百年と地球も沢山がまんを重ねてきたのだろう。ゆがみ、ひずみ、横揺れ、縦揺れ、突き上げる、沈む、隆起する。お静まりください、と願うばかりだ。
　山口も揺れた。その揺れは遠く大分が震源地。日本列島の深い地下は、人の血管のように繋がっているのだ。真っ暗の中で枕元に用意した懐中電灯を手探りで点けた。壁に貼った写真の虎の目が光った。怒っている目だ。虎の生息地も開発により危うい。遠い森も揺れている。　
　避難所の女性と阿蘇と虎と地球とを私は感じている。