サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　“平成28年度がん検診等受診券〟が山口市から届いた。早期発見なら簡単な手術で完治できると信じて2年に一回の検診年は必ず受診している。
　私の乳房は、クーパー靭帯という筋が伸びきってラ・フランスの形で下垂している（歳だということなのよ）。その分、楽々とマンモグラフィ撮影装置の台の上に乗せることができ、圧迫板に挟まれても痛くない。
　撮影した画像の説明を医師から聞く。黒く映っているのが脂肪、白が乳腺。「これね、二十代の人の画像」と医師。乳腺が詰まっていて乳房は真っ白。「四十代の画像」。胸の方が黒く透明になっているがまだ白く満ちている。「これは六十代」。ほぼ透き通っている。「これ、あなた」。私は目の前の乳房の美しさに驚いた。真っ黒に透き通った乳房に役目を終えた白い乳腺が芸術的に数本走っている。南の島の夜の航空写真のようだ。乳房の形が島の形。乳頭辺りが町で少し賑わっている。数本の白い乳腺は道で島の奥に向かう。静かだ。
　若い女性の乳房は乳腺が白く満ちている。子を産めば乳を溢れさせねばならない。その用意に忙しい。次第に乳腺は役目を終え、透明になっていく。クーパー靭帯もくたびれ、下垂し胸と一体化し存在を消す。不満も言わずに黙々と役目を果たし、消えていく。なんと健気な乳房よ。