2018年10月17日
声
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
なんたって、なんたって草の成長が早い。庭は森になり、背の低い露草やツンとすました紫色の花が見えない。蔓性の草はお隣へ塀を乗り越えて伸びる。 仕方がないので草取りをする。背の高いススキに手をかけ引き抜こうとすると案の定声がする。「どうして、私を抜くの。秋の風に気持ち良くしているのに」と聞こえる。「まあ、今年はこれくらいにして来年また会いましょう。往生して下さいな」と返答する。
蜘蛛が幾つも網をはっている。中の一つの銀色の網に小柄な蛾のような虫がひっかかっている。小刻みに羽を震わせている。逃がしてやろうかと手を伸ばした時に頭の中で声が響いた。“人間の優しさで解決できないことが動物や昆虫の食物連鎖の世界にはあるのだ”。本の中にあった言葉だ。静かに手を引っ込める。
ああ、草取るだけなのに神経が疲れる。花や木々が癒やしにならない。自分が手を染めず観賞だけするのなら、まあきれい。まあ可哀そう、だけになるだろうか。なるだろうな。意外と他人の痛みには鈍い。
草取りを中途半端にして、ベッドに寝転がって友達が貸してくれた本を読む。「戦犯の孫 『日本人』はいかに裁かれてきたか」。帯には-罪をいつまで背負わなければならないのか-。もう既に孫の時代なのだ。想像力を駆使して声を聞こう。
なんたって、なんたって草の成長が早い。庭は森になり、背の低い露草やツンとすました紫色の花が見えない。蔓性の草はお隣へ塀を乗り越えて伸びる。 仕方がないので草取りをする。背の高いススキに手をかけ引き抜こうとすると案の定声がする。「どうして、私を抜くの。秋の風に気持ち良くしているのに」と聞こえる。「まあ、今年はこれくらいにして来年また会いましょう。往生して下さいな」と返答する。
蜘蛛が幾つも網をはっている。中の一つの銀色の網に小柄な蛾のような虫がひっかかっている。小刻みに羽を震わせている。逃がしてやろうかと手を伸ばした時に頭の中で声が響いた。“人間の優しさで解決できないことが動物や昆虫の食物連鎖の世界にはあるのだ”。本の中にあった言葉だ。静かに手を引っ込める。
ああ、草取るだけなのに神経が疲れる。花や木々が癒やしにならない。自分が手を染めず観賞だけするのなら、まあきれい。まあ可哀そう、だけになるだろうか。なるだろうな。意外と他人の痛みには鈍い。
草取りを中途半端にして、ベッドに寝転がって友達が貸してくれた本を読む。「戦犯の孫 『日本人』はいかに裁かれてきたか」。帯には-罪をいつまで背負わなければならないのか-。もう既に孫の時代なのだ。想像力を駆使して声を聞こう。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│おんなの目