サンデー山口

実際の紙面はコチラ（公開期間は発行から1カ月間です）

　種を蒔かなければ花は咲かない。大根は畑で実らない。種は絶対必要だ。
　なにがしかの種がなければ才能ゼロの私は書けない。書く種を求めて友人達に付きまとう。
　税金を払いに行く、と知ればついて行く。ちょこんと隣に座って聞く。
－フムフム、納税は国民の義務なんですね。フムフム。
　デパートに下着を買いに行く、と聞けば断られてもついて行く。
－えっ、そんなのをつけるの！　それってビキニ型じゃないの。えっ、紫色を買うの…えっ、パットを入れているのね。知らなかった…。
　早朝四時、シュークリームが欲しくて目が覚めた。これは吉兆だ。シュークリームが食べたくて目が覚めるなんて非凡だ。これが書く種になるかもしれない。名作に成長するかもしれない。逃すな！
　パジャマを脱ぎ捨て、素早く赤い花柄のアッパッパー（頭からかぶる綿の簡単服）を着て裾ひるがえして自転車に乗る。目指すは昼夜営業のコンビニ。近くにコンビニは二軒あるが不愛想な店主のいる店の方に行こう。老女（強い山姥を連想させるこの言葉好きなんです）が早朝アッパッパーでシュークリーム一つ買うのに店主の笑顔はいらない。
　ああ、爽やかな風。食欲の秋が来た。種はどこに行った？