2019年04月20日
No.01 春宵感懐 詩集『在りし日の歌』より
実際の紙面はコチラ(公開期間は発行から1カ月間です)
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあつたかい、風が吹く。
なんだか、深い、溜息が、
なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、摑めない。
誰にも、それは、語れない。
誰にも、それは、語れない
ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
けれども、それは、示かせない……
かくて、人間、ひとりびとり、
こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの
ことして、一生、過ぎるんですねえ
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあつたかい、風が吹く。
【ひとことコラム】
暖かな春の夜には、冬の寒さにこわばった体がほぐれるように、感覚が解放され思いが広がっていきます。そんなやわらかな心の中に浮かびあがる、言葉にできない大切なものの存在や、同じ時代を共に生きる人々の姿を、この詩はやさしく語りかけるようにうたっています。
中原中也記念館館長 中原 豊
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあつたかい、風が吹く。
なんだか、深い、溜息が、
なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、摑めない。
誰にも、それは、語れない。
誰にも、それは、語れない
ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
けれども、それは、示かせない……
かくて、人間、ひとりびとり、
こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの
ことして、一生、過ぎるんですねえ
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあつたかい、風が吹く。
【ひとことコラム】
暖かな春の夜には、冬の寒さにこわばった体がほぐれるように、感覚が解放され思いが広がっていきます。そんなやわらかな心の中に浮かびあがる、言葉にできない大切なものの存在や、同じ時代を共に生きる人々の姿を、この詩はやさしく語りかけるようにうたっています。
中原中也記念館館長 中原 豊
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│中原中也詩の栞