サンデー山口

　３月３日（水）は桃の節句。子どもの健やかな成長を願い、ひな人形を飾る女の子のお祭りだ。宮野下の主婦・矢野登志子さん（66）は、ちりめんを使ったひな飾りを７年前から作製しており、今年はそのうち５００点余りを自宅に展示している。また、秋穂霊場88カ所の第83番札所で知られる名田島の岩屋山地蔵院では、福岡県柳川市で有名な「さげもん」と呼ばれる珍しいひな飾りを飾っている。
宮野下の矢野登志子さん　ちりめん細工500点がズラリ
　矢野さん宅の和室は今、ひな祭りムードでいっぱい。ハマグリの上に一つひとつ表情の異なるおひな様やお内裏様がずらりと並び、天井からは縁起物とされるネズミや宝袋などの小物を糸で通した柳川地方の伝統飾り「さげもん」が何本もつり下げられているほか、寝そべった童子・ウサギの人形、パッチワークなどがきれいに飾られている。その数、およそ５００点。これら全てが、矢野さん手作りのちりめん細工だ。
　中学校の家庭科教員だった矢野さんがちりめん細工を始めたのは、定年退職した97年。何か趣味を見つけようと、軽い気持ちで文化教室に通い始めた。ところが、家にあった古布が再利用できることと、同じものは二つと作れないという点に魅力を感じ、ちりめん細工にどんどん引き込まれていった。
　研究熱心な矢野さんは、雑誌などに載っているちりめん細工を参考に、数々のオリジナル作品を創作。飾り付けなどを勉強するため、柳川市や大分県日田市で開かれるひな祭りの視察に出掛けることもある。
　また、なるべくお金をかけず、身の回りにあるものを工夫して製作していくのも矢野さんのモットー。不要品や壊れてしまった物も、いつ、どのようなものに利用できるかわからないと大事に取っており、壊れた植木鉢の皿や数珠玉、庭になったフウセンカズラの種子、食べ終えたハマグリの貝殻などを材料の一部として使ってきた。タマネギの皮、アサガオ、パンジー、雑草なども、染料として利用している。
　一つの作品を完成させるのに約４時間。難しい物だと１週間を費やすこともあるが、これまでに千個以上の作品を作り上げてきた。３年前からは年ごとにテーマ（今年はさげもんと貝）を決め、ひな祭りの時期に飾り付けを行い、友人らを招いている。矢野さんは「手先を使ったり、考えたり、物づくりは本当に楽しい。３月末まで展示しているので、興味のある方はどうぞお越し下さい」と呼びかけている。
　問い合わせは、矢野さん（TEL083-923-7253）。



名田島の岩屋山地蔵院　柳川の伝統飾り「さげもん」
　岩屋山地蔵院でも、寺の一室に「さげもん」が飾り付けられている。
　さげもんは、女児の誕生と同時に母親や祖母らが縁起の良い小物を布で作り、７連の糸を通してつり下げる。同院に嫁いできた林真希さん(26)は柳川の出身で、長女ひよりちゃん(３)が初節句を迎えた時に、真希さんの実母が古くからの風習にならい、手作りの品を贈ってきてくれた。
　さげもんは全部で11本あり、中央の段飾りを囲うように下げられている。真希さんは「本場に比べるとかなり数は少ないのですが」と謙そんするが、ひよりちゃんは「おばあちゃんが作ってくれた。とってもきれい」と喜んでいる。
　展示は４月３日まで。問い合わせは、同院（TEL083-987-3044）。