サンデー山口

　山口市がＪＲ山口駅２階に設置している「山口観光案内所」が、このほど県内初の「ｉ」案内所の指定を受けた。「ｉ」案内所とは、外国人受け入れ態勢の整っている公的観光案内所の事を指す。今後は、全国の「ｉ」案内所と連携しながら、海外からの個人旅行者受け入れ態勢の強化を、今以上に図っていく。
　「ｉ」案内所の指定をするのは、東京に本部を置く独立行政法人・国際観光振興機構（ＪＮＴＯ）。外国人が、日本国内を安心して一人歩きできるような受け入れ態勢づくりを進めている組織で、その一環として、83年から「ｉ」案内所の整備事業に取り組んでいる。
　「ｉ」案内所は、地方公共団体や観光連盟（協会）などが運営する公的で非営利の観光案内所が対象。駅や空港、バスターミナルなど、交通拠点の近くまたは、市街地や有名な観光地など分かりやすい場所にあるといった立地が必須条件になっている。さらに、外国語（基本的には英語）のできる職員が常駐していることや、職員が対応できない外国語については、通訳などのリストを常備していることなど、ソフト面でも様々な基準が定められている。
　山口観光案内所は、岩手県観光協会とともに指定を受け、全国の「ｉ」案内所は１１６カ所になった。指定を受け、同案内所には「ｉ」案内所の共通サインである”？”マークの案内板が新設された。
　市は、99年から山口観光案内所に英語のできる臨時職員を配置。土曜・日曜を中心に、週５日の勤務態勢をとっているほか、所内の案内板にも英語表記を取り入れるなど、外国人観光客の来訪に備えている。外国人からの問い合わせは、初年度こそ34件と少なかったものの、00年度以降は毎年２００件近くあり、山口きらら博が開かれた01年度には２９９件を記録。昨年度は２２２件だった。
　アメリカやヨーロッパ、韓国、中国、台湾など、来訪者の国籍は様々だが、ほとんどの人が英語を話せる。一方、案内所の他の職員も、ここ数年で外国人応対に慣れてきており、専門の職員がいない場合でも、ある程度の案内はできるという。案内所の運営を担当し、同じフロアに事務局を置く山口観光コンベンション協会の五十部豊専務理事は、「お互い”カタコト”の英語同士でも、それなりに会話できる。一人で旅する外国人にとって、こうした生のコミュニケーションは心強いはず。応対する我々も楽しい」と話す。
　「ｉ」案内所の指定を受けたことで今後、ＪＮＴＯが発行するパンフレットなどに、所在地が掲載されたり、接遇の研修などが受けられるほか、中国語や韓国語などへの通訳に電話で対応する３者間通話のサポートもスタートする。

一人歩きにはハードルも
　具体的な問い合わせで多いのが、観光地への行き方や両替ができる場所など。外国人旅行者の多くが山口駅に降り立つため、駅構内にある同案内所は、立ち寄るには最適の場所。しかし、瑠璃光寺の五重塔や雪舟庭などの観光地からはやや離れている。交通標識などにも英語やハングルの表記が増えているものの、車中心に考えられており、徒歩の旅行者には分かりづらい。また、バスの路線も数字や色分けがされていないため、説明が難しく、結局現地まで職員が同行するケースも少なくないという。
　両替は、平日の昼間は銀行で可能だが、夕方や土曜・日曜は無理。外国人宿泊客が少ないため、ホテル・旅館ではほとんど対応していない。
　市観光課の香川昌之課長は「国が観光立国を掲げており、山口市にとっても海外からの観光客獲得は重要。外国人にも足湯を体験してもらいたいし、湯田温泉に泊まって欲しい。今回の指定をきっかけに、官民がこれまで以上に力を合わせていければ」と話している。