2004年04月17日
老後は田舎でのんびりと

山や田畑に囲まれたのどかな仁保上郷の中心部に、ケヤキのテーブルやいすなどがずらりと並ぶ小さな工房「古木の里 仁保」(TEL090―1681―3991)がある。地域住民の集いの場にもなっているこの工房は、大内長野に住む主婦・河村眞理子さん(48)と会社員の夫(50)が、共通の趣味である木工を楽しむため、1年前に開いた。「夫の定年後はここで暮らしたい」と、夢を膨らませる河村さん。10年後の生活を思い描きながら、充実した日々を送っている。
工房に展示されているのは、素朴でやさしい風合いのテーブルやイス、小物など約50点。ケヤキは磨けば磨くほどにあめ色の光沢を放ち、年数を重ねると味のある趣きをかもし出す。一つひとつ違う木の形をそのまま生かして磨き上げるため、同じ作品は二つとない。夫の仕事の都合もあり週1日程度しか足を運べないが、工房を開けると、近所の人や愛好家、通りすがりの人などがふらりと立ち寄る。
河村さんが木工を始めたきっかけは、7年前に夫婦で訪れた「熊毛民芸館」。迫力あるケヤキ作品を一目見た瞬間、河村さんはその魅力に取りつかれた。以来、夫の休みのたびに民芸館に足を運び、作品作りに没頭。これといった趣味を持たなかった夫もすっかり古木のとりことなり、力仕事は夫、細かい作業は河村さんという二人三脚の製作活動が始まった。
完成したテーブルや花台などを次々に持ち帰るうち、いつしか家の中は作品だらけに。そこで河村さんは、自分たちの工房を構えようと一念発起。知り合いのつてで、何年も空いたままになっていたJA上郷支所を借り、昨年5月に工房を開いた。
工房通いを続けるうちに、都会育ちで、以前から素朴な田舎暮らしに憧れていた河村さんは、自然豊かなこの地で老後を過ごしたいと思うようになった。地域に少しでも溶け込もうと、工房で作品を作りながら、近くを通る人に声をかけてはお茶に招いた。今では、工房が開くと近所の人たちが自然にやってきて、作品を見たり世間話に花を咲かせたりしている。しばらく工房を休むと「具合が悪かったの?」と心配してくれたり、家で取れた野菜などを差し入れてくれたりもする。同地区に住む89歳の女性は「ここに寄るんが楽しみでね。若い人が来てくれて、本当にうれしい」と話す。
河村夫妻の夢は、10年後にこの地に移り住み、工房で細々と商売しながら、のんびりと生活すること。手先が器用で、家や車、電化製品の修理までやってのける夫は、「便利屋さん」として地域の役にも立ちたいという。「一人暮らしのお年寄りが多い地域。私たちも近所付き合いに入れてもらい、助け合って生活したい」と河村さん。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│ニュース