2004年07月11日
昭和美術会展 上位2人が市内から

今月4日まで京都市美術館で開催されていた公募絵画展「創立30周年記念昭和美術会展」で、吉敷の井上広之さんが最高賞の文部科学大臣奨励賞を、富田原の水野邦子さんがそれに次ぐ芸術賞を受賞した。今年は全国から約400人が650点を出品。山口県からは5人が応募し、その中で市内から2人が入賞したことは快挙といえる。
文部科学大臣奨励賞 井上広之さん 「なにが何でも一番になる」 これが井上さんのモットーだ。初出品から25年。最高賞の知らせが届いた時は、思わずガッツポーズをしたという。「今年こそはと狙っていた。石垣を一つ一つ描くという手間のかかる作業に取り組み、締め切り一週間前は寝ずに、自分を追いつめながら頑張った」とその苦労を振り返る。
受賞作品「遠き日々に(決意)」(100号)は、青色を基調にアクリル絵具と砂を混ぜた下地剤で描いた。ペルーの古代遺跡マチュピチュと宇宙を背景に、何かを決心した一人の女性が中央に立つ。遺跡と宇宙、そして女性を融合させることで、それらに共通する神秘性を表現した。
以前は中学校の美術教師で、11年前に県埋蔵文化財センターに転職。5年前からは市文化財保護課で遺跡などの発掘に携わる、考古学が大好きな井上さんならではの作品だ。「昔の人が残した遺跡には夢とロマンがある。宇宙は地球生命そのもののエネルギー源だし、女性は生命を生み出す強い力を持っている」。これまでも、ナスカの地上絵など世界に残る遺跡と宇宙、女性にこだわり、「遠き日々に」というタイトルで、副題を変えながら50作品以上を手がけてきた。「来年からもスタイルを変えず、人の心に訴えるような絵を描き続けたい」と意欲をみせる。
なお、受賞直後にシリーズの一つ「遠き日々に(迷夢)」が、フランス芸術家協会主催の国際公募展「ル・サロン」に初出品で入選するという知らせも届いた。世界最古の伝統を持つ賞だけに、井上さんは喜びと興奮を隠せない様子だ。

芸術賞 水野邦子さん NHKカルチャーセンター講師・自宅アトリエ「河童絵画教室」主宰の水野さんの作品は、1年間かけてゆっくりと描いた油絵(100号)。子どもが起こす事件など社会問題をテーマに取りあげた。タイトルの「Animals」は「人間もしょせんは動物なんだ」という意味を込めている。
1年前、パソコンを使って子どもの絵を描いていると、突然カーソルが勝手に動きだした。やり直そうと思いよく見ると、パソコンが自由に描いた線は、不思議な子どもの姿になっていたのだという。「これだ!」。自分では思いもつかなかった曲線を見てひらめき、すぐにその絵をヒントにキャンバスに描き始めた。
何重にも重ねた線の間に色を入れて、手すきの和紙や麻糸、金ぱく、段ボールなどを絵に張り込んでいくのが水野さん流。絵の数カ所に「VIOLENCE」(暴力)などの文字を組み込んでいる。
水野さんは「途中思うように書けない時もあり、何度も放り投げようかと思った。時間もかかり苦労した作品だっただけに賞の知らせを聞いた時は、本当にうれしかった」と喜んでいる。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
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