2004年09月05日
「やまぐち祈りの108樹」発行

里山自然誌の会の代表を務める三宅貞敏さん(68、金古曽町在住)は、信仰などの対象となっている県内の名木をまとめた「やまぐち祈りの108樹」(B6判、231ページ)を刊行した。神社・寺社、または人里離れた山中に根を下ろし、人々の祈りを受け止めてきた巨樹を、写真や解説などを入れて紹介している。
三宅さんは県立山口博物館の元学芸員。これまでに植物の調査・資料編集に数多く携わり、昨年3月には市内にある大きな木にスポットを当てたパンフレット「残したい山口市の巨樹・名樹50選」を無料で発行し、好評を得た。
今回は、パンフレットを手にした人から「市内だけでなく県内の巨樹も紹介してほしい」という要望が多く寄せられたため、昨年4月から冊子作成のための調査を実施。その過程で、巨樹・名樹と呼ばれるものの多くは、古くから「依り代」として神聖視され、信仰の対象になっていることに着目。「祈りの対象になっている巨樹だけを集めてもおもしろい」と路線変更した。
そこで、これまで集めてきた県内巨樹の膨大な資料を基に、神社・寺社の木(神木など)、民間信仰にまつわる木、墓にある木などを選抜。各巨樹の写真を撮り、種類や特徴、大きさなどをまとめたまでは良かったが、由緒についての調査は難航。いわれのある巨樹の中には現地に何の説明書きもされていないものも多く、それらについては古い文献や市町村史を参考にし、それでもわからない場合は地元の人たちに聞いて回った。
こうして完成した冊子には、国指定天然記念物、県指定自然記念物などを含め、人間の煩悩と同じ数の108樹を掲載。ナギ、アカガシ、コナラ、スダジイ、クスノキ、ハゼノキなど種類も様々で、山口・小郡からは一の坂銀山の守り神だった「山の神のツクバネガシ」(宮野)、えぐった根元に地蔵菩薩が彫られている「山根観音堂のクスノキ」(大内氷上)、大内弘幸の家臣・平弘兼が植えたとされる「クスノキ」(大内菅内)、生木地蔵の伝説が残る「アラカシ」(秋穂二島)など16樹が選ばれている。
「これも時代の流れだが、巨樹に対する信仰は薄れつつあり、地元の人ですらどうして祀られているのか知らないこともある。そうしたことから、長年手入れをされず、台風・つる植物・菌類に侵され、腐りかけている木も少なくない」と三宅さん。「巨樹をジッと見ていると、いろんな人の祈りを受け止めながら、よくここまで生きてきたと感慨深くなる。冊子には場所の詳細も記載しているので、時間を見つけて足を運んでもらいたい」と話している。
価格は2千円。県庁1階県刊行物センターで販売中。
Posted by サンデー山口 at 00:00│Comments(0)
│ニュース